ワインのコルクを使って描く「コルクアート」はどのように作られているのか?

遠くから見ると、そこにはどこかで見たことがある顔が見えてきました。ナポレオン、マリア・カラス、ルイ・アームストロング…。

コルクに染み込んだワインの濃淡を利用して描かれる肖像画には、どこか温かみを感じます。このコルクアートを手掛けるのは、原宿にある「Keisuke Matsushima Tokyo」に勤めるシニアソムリエ・久保友則さん。

長い年月にわたってワインが染み込んだコルクは、様々な表情を見せてくれます。白ワインか赤ワインでもコルクの色は違いますし、 ブドウ品種でも変わってきます。そんなコルクのグラデーションを用いたコルクアートについてお話しを伺ってきました。

最初にコルクアートをするようになったきっかけを教えて下さい。

21歳の頃からワインショップやレストランなど、ワインを取り扱う仕事をしていました。当時、ワインが飲まれるたびにコルクがゴミとして出ていくのは気になっていて、「これで何か作れないだろうか?」と思っていました。

最初は少ない数のコルクを使って、お家やイカダなど、簡単に作れるモノからスタートしたんです。そんな時に勤めているお店で、小さな樽1個分くらいのコルクが溜まっていたので、それらのコルクを並べて眺めていた時に、コルクに付いたワインの色を使って絵を書けないだろうか?と思いついたんです。それがコルクアートのきっかけですね。

そこから、どうやって実現化させたのですか?

どうすれば絵になるのかが分からなかったので、当時一緒に仕事をしていてワインも大好きなデザイナーのハヤシコウさんに、「コルクが持つ色の違いを使って絵が書けないか?」とか「コルク1つを黒目として人の顔を作ろうと思った時、どのくらいの大きさで作れば顔になるのか?」を相談したんです。

コルクの色は個体差があり、色が薄いコルクから濃いコルクまであるので、最初はコルクの色の違いをどのくらいのパターンで分れば良いかを考えました。そこから様々な議論を重ねた結果、サイズは1メートル×1メートル、コルクの濃さは10段階あれば表現できるだろうとの結論に至りました。

でも、このサイズで実現するには、コルクが2000個以上必要になる計算になったんです。しかも、10色のコルクがどのくらい必要になるか分からなかったので、3000個は準備しておこうと、「コルクをください」とあちこちに声をかけ続けていたら、3、4カ月後には目標の数が集まったんです。

コルクが集まれば1~10までそれぞれの色に仕分けをしていきます。「これは無色なので1番」、「ワインが濃く染みているから10番」という感じですね。あとは、その番号が設計図にあらかじめ書かれているので、同じ番号のコルクを当てはめていくだけなんです。

最初に作った作品はなんですか?

初めて作った作品はナポレオンです。ナポレオンにまつわるフランス革命期のことを調べながら、コルクを集めるのも大変で、制作には半年かかりました。

フランスワインが好きなので、フランスにゆかりがある人、もしくはワインにゆかりのある人を選んでいます。

例えば、ラルー・ビーズ・ルロワさんですね。カリスマ的なワインメーカーの女性オーナーさんなんですが、ワイングラスを持っているところをモチーフにしたりしています。完成した作品写真をご本人にメールしたら、とても喜んでいただいて嬉しかったです。

なぜレストランに飾られているんですか?

僕が制作したコルクアートは、たくさんの人がワインを飲んだからこそ出来あがるものです。参加型アートともいうのでしょうか?ワインを飲む人たちがいなければコルクは出てこないし、自分のところに届けてくれなければ集まらないですよね。だからこそ、ワインが一番飲まれる場所であるレストランに飾りたいという気持ちがあります。

コルクが集まるようになった仕組みを教えてください。

やはり1作目の影響が大きいですね。ナポレオンのコルクアートを見ていただいた人たちに、「次も作りたいんです」と言ったら、応援していただいて自然と集まってくるようになりました。

「コルクアート」の話が広がっていって、代理で集めてくれる人が現れたり、コルクをたくさん持っている人を紹介してくれたり、貯めている人のコルクの情報を貰って取りにいったこともあります。ワインを飲む人たちのおかげでコルクが集まる仕組みが出来ました。

依頼されて作ることもあるんですか?

これまでほとんどが自主制作で、依頼されて作ったことは2016年に1度だけです。大阪でオリーブオイル国際商談専門見本市が開催されたんですが、その時に主催者の方に「見本市のロゴを作って欲しい」と依頼を受けました。オリーブとワインって一見別のもののようですが、古代ローマ時代から意味深いものなんです。

コルクアートで今後いろいろなものを描いてみたと思っています。建築物や風景だったり、人物であれば会社の創業者であったり、過去を振り返って未来につながるようなメッセージが込められたらと。制作に膨大な材料(皆さまがワインを楽しんだ記録です)と作業時間が掛かるので、仕事として受けていきたいなと。ただ、ちゃんと本業があるので、コルクアートで食べていこうとは考えていません。笑

誰でも作れるコルクアートを教えていただけますか?

ブドウは初心者にもお薦めですよ。コルクを三角形に並べていくとブドウのようになります。本物のブドウも太陽の当たり方によって色が違うので、不揃いなコルクの色が本物のブドウっぽく見えるんです。

あと、小さなお子さんとコルクアートを作るときには切ったりしないでそのまま作れるものがいいですね。例えばコルクを立てて並べて木の家を作ることもできます、コルクによってはハートマークがついているものがあったりするので、それを玄関に使ってみたり。あとは、コルクを横にならべてくっつけてイカダも作ってみました。コルクは浮くので、お風呂に浮かべて遊ぶこともできるんです。

最後に久保さんにとってのコルクアートとは?

ワインのコルクは皆、捨てちゃうんですけど、使おうと思えばその瞬間からゴミではなくなります。コルクアートを通じて、リサイクルとか再利用というメッセージも込めているんですが、やはり、コルクアートとして食卓に戻ってきて飾られることでコミュニケーションが生まれ、「楽しくみんなでワインを飲みましょうよ」ということが言えることですね。 ワインってちょっと難しいとか敬遠されがちじゃないですか。詳しくないといけない、どっちが美味しいワインだとか、生産国はどこだ?とか、そういうことはどうでもよくて、もっと気軽に楽しんでいいと思うんですよね。シニアソムリエが言うので安心してください。

赤が飲みたい、白が飲みたい、今日は寒いから冷えていないのが飲みたいとか、そのくらいでいいんです。「この料理にはこのワインじゃなければいけない」ということはありません。魚でも赤ワインが飲みたければ飲めばいいんです。

そういう時ワインが美味しくなる法則はありますが、そこに縛られなくてもいいんです。ルールに縛られて堅苦しくなるよりも、もっと自由にワインを多くの人に飲んでもらいたいですね。コルクアートがそんなきっかけになってくれたら嬉しいです。

ありがとうございました。

コルクアートは、久保さんが勤める「Keisuke Matsushima Tokyo」で見ることができます。オーナーシェフである松嶋啓介氏のNice本店のレストランでも、ワインと料理を楽しみながらアートは豊かな会話を引き出すもののひとつとして飾られています。

Keisuke Matsushima
東京都渋谷区神宮前1−4−20 パークコート神宮前
営業時間:11時30分~15時00分, 18時00分~23時00分
電話: 03-5772-2091
http://keisukematsushima.tokyo/

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