香りを嗅いだ瞬間に昇天!シャルドネのトップレンジが味わえるアタラクシア

今回ご紹介するのは「南アフリカのモダンブルゴーニュ」と言えるエレガントなシャルドネ「アタラクシア」です。

このワインはすでに業界、一般問わずかなりの人気ワイン。というのも、コアなワイン好きの方に人気のある「ワインレポート」と言うサイトで2014年ヴィンテージが紹介され、瞬く間に市場から姿を消したと言う過去があるのです。当時うちの店でもこのワインを取り扱っていたのですが、発注しても欠品続きで入荷がないため輸入元に問い合わせたところ完売したとのこと。影響力のある方のコメントは市場の動向を一気に変えてしまうということですね。

アタラクシアとの出会い

私がこのワインに出会ったのは、数年前に輸入元の会社が催した南アフリカのワイン限定で50種類ほど並ぶ試飲会でした。その中でも圧倒的な存在感を放っていたのがこのワインで、その場ですぐに1ケース購入を申し込んだほど美味しかったのです。

その味わいは一言で言うなら「ブルゴーニュ・スタイル」。それもリアルタイムな現在のブルゴーニュのスタイルです。スタイルというのも時代によって変わるもので、例えば90年代のブルゴーニュの白ワインはとにかくリッチでコッテリした樽香のガッツリ効いたものが多く、今とはまるで違うもの(このスタイルは根強いファンも多く、カリフォルニアを始めとする新世界のシャルドネに多くその影響が未だに見られます)。

おかしな言い方と思われるかもしれませんが、この年代のブルゴーニュのシャルドネよりも、アタラクシアのシャルドネのほうが現在のブルゴーニュらしさを体現しているように思えてなりません。

90年代のブルゴーニュのシャルドネは、収穫をギリギリまで遅らせて十二分に完熟させてからリッチなフレーバーを引き出すための醸造方法(バトナージュやシュル・リーなど)そして高い比率で新樽を使用しての熟成といった造り方が特徴でした。

しかし現在のブルゴーニュのシャルドネは、よりエレガントで抑制の効いた繊細なものが主流。しかし繊細なだけでなく、もちろんリッチなフレーバーも絶妙に存在させています。昔リッチ一辺倒だったスタイルのワインを造っていた生産者も、現在はこのようなスタイルにシフトした人も少なくありません。そしてアタラクシアは正にその「モダン・ブルゴーニュ」のスタイルを遠く離れた地で再現している稀有な生産者です。

造り手と土地の話

オーナーのケヴィン・グラントは、南アフリカのワインメーカーのパイオニア「ハミルトン・ラッセル」で醸造責任者を10年以上務め、その後に世界各国でワイン造りを学んだ人物です。

2004年、夫人のハンリと供に南アフリカ最南端に近いへメル・アン・アードという地にワイナリーを開きました。南アフリカは南半球なので南に行くほど寒くなります。この地の冷涼気候を活かして造られるシャルドネはエレガントさを保ちながらも複雑性やリッチさも兼ね備えた、誰もが美味しいと思えるワインに仕上がっています。

ワインの特徴

色合いは濃過ぎないイエロー。しかし粘性は高く、グラスの淵に涙をくっきりと残します。
香りを嗅いだ瞬間、大抵の人が昇天出来るはず(私もそうでした)。しっかりと熟しながら決して派手にならないパイナップル、グレープフルーツ、桃など挙げたらキリがないほどの多彩な果実達と強過ぎない絶妙な樽香。「これ、ブルゴーニュじゃないの?」と独り言が出てしまったほどです。

そして飲めばパーフェクトなバランス。リッチさに溢れた果実、オーク(樽)を感じさせながらもお色気ムンムンではないスマートな印象。これは冷涼な産地で時間を長くかけて過熟させることなくブドウを成熟させたおかげでしょう。

最後に

アタラクシアはぜひ大きめのグラスで、少し高めの冷やし過ぎない温度で飲んでいただきたい。そんな一本です。

「シャルドネはなんてったってブルゴーニュでしょ!」そう頑なに思い込んでる人にほど飲んでいただきたいですね。シャルドネのトップレンジの味わいがブルゴーニュの数分の一で買えますよ。

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渋谷にある隠れ家ビストロ「Bistro Ku hanare」でソムリエをやっています。趣味も仕事もワイン、という幸せ者です。

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