石川県に期待の新ワイナリー誕生!金沢ワイナリーの井村辰二郎さんを直撃

【後編】MIEKO キャンベルアーリー2016ペティアンについて

Q.プレ・ファースト・ヴィンテージが発売されましたが、すでに醸造は自社でやられているのでしょうか?

実は、プレ・ファースト・ヴィンテージとなった「MIEKO キャンベルアーリー 2016 ペティアン」は、醸造の勉強をさせていただいる、富山県氷見市の「セイズファーム」さんで委託醸造にて造ったワインです。自分たちでの醸造は2018年の9月からスタートさせる予定となっています。ワイナリーが設立され、場所も決まっているのですが、醸造免許はこれからです。レストランなどもどういった内装にしていくかなど、今動いている最中といった感じですね。

Q.今回、醸造所とレストランが併設されるとお伺いしているのですが、どの程度まで決まっておられるのでしょうか?

レストランなのですが、まず結論からいうと“カジュアルなフレンチ”というスタイルでやろうと考えております。実は、この醸造所兼レストランというスタイルのお店は、金沢の町家を利用してやろうと思っているんですよ。

Q.なぜ、町家にしようと思ったのでしょうか?

醸造所をつくるにあたってですが、現段階でこの場所には能登で醸造所は2つできていますよね。私たちのブドウも能登で栽培されているので、ひとつはこの能登に醸造所をつくるという考え方があります。ただ、私が北海道や山梨、長野などの全国のワイナリーをまわってみて感じたことなのですが、みんな風光明媚な素晴らしい場所にありますが、ワインツーリズムの観点で見ると難しい部分も多々あるような気がするんです。

車でしかアクセスできない場所も多いので、結果的にお客さまがワインを飲めませんし、冬の時期は枯れた木があるだけで、ハイシーズンは葉の生い茂る結実期から収穫、紅葉の時期だけ…。

1年を通してお客さまを迎え入れられるしっかりとしたコンセプトが無いと、かなり厳しいと感じました。これと同様に能登に人を呼び込むということは非常に大変なことですし、相当な時間がかかってしまうことが予想されます。では、どうすれば良いかを悩んでいたんです。

Q.レストランと醸造所を合体させるというアイデアにたどり着いた理由は何だったのでしょうか?

そんな時、皆さんもご存知の「フジマル醸造所」さんのアーバンワイナリーという考え方に出会ったんです。「そうか。我々は、石川のさまざまな場所でブドウをつくることができる。それを金沢に持ってきて醸造すればいいんだ」という結論にたどり着いたのです。地元の方や観光客の方たちに、能登に興味を持ってもらい、そこから能登の方へ行っていただけるキッカケづくりができれば良いな、と思ったんです。

Q.結果的に町家に落ち着いたのは何故なのでしょうか?

最初は、金沢の地下があるビルなどを見て回ったのですが、せっかくやるなら“金沢らしさ”が欲しいと思い始めたんです。そこで、町家がいいのではないかと思いついたのですが、やはりそれなりにスペースの制約が出てきます。

それでも、町家という建物は“うなぎの寝床”などと呼ばれているように、間口が狭く奥に長い構造をしているんですね。その造りを利用して、1階はワイナリー、二階をレストランという形で決定したんです。現段階では、どのようなレイアウトにするのかなど、さまざまな部分を決めているところです。

Q.なぜ、カジュアルフレンチなのでしょうか?

金沢には素晴らしい食材が揃っており、食文化もとても華やかです。そのなかで、金沢ワイナリーのレストランということで、当初はイタリアンとフレンチの中間のビストロが良いのではないかと思っていたんです。

実は、山形県にあるイタリアンの名店「アルケッチャーノ」のシェフである奥田政行さんにこのお話をしたところ、ご協力いただけることになったんです。その後、奥田さんのお知り合いで35歳のフレンチのシェフの方をご紹介いただきました。

技術も熱意もある方でしたので、私も一緒にやりたいと強く思い、そこから軌道修正してフレンチにすることにしたんです。

ワイン自体もフレッシュでカジュアルなワインを最初は提供することになりますし、気軽に楽しめるように、“カジュアルフレンチ”というテイストでやっていきたいと思っております。ぜひ、楽しみにしていてください!

 

Q.ファーストヴィンテージとなった、「MIEKO キャンベルアーリー 2016 ペティアン」について教えてください。

まず「MIEKO キャンベルアーリー 2016 ペティアン」は、当社の農場で栽培されたオーガニック認証の取れているキャンベルアーリーを原料にしています。

Q.醸造のこだわりは何でしょうか?

キャンベルアーリー自体は、さまざまなスタイルのワインとなるのですが、この品種の特徴であり魅力はなんといっても、あのフルーティーな香りだと思っています。フルーティーで華やかな香りが楽しめる、女性が飲みやすいワイン…。このスタイルを目指すために、セイズファームの田向さんと相談して仕上げていきました。

Q.ペティアンに仕上げた理由は何だったのでしょうか?

赤く濃い色にするのではなく、ロゼっぽい色で淡く美しい色合いに仕上げるように、スキンコンタクトの工程において工夫をしました。また、アルコール度数もそれほど上げず、砂糖も添加せずにフルーツの味わいを活かすことを目指しました。結果、アルコール度数は8%なのですが物足りなくならぬよう、2気圧くらいの微発泡性を持たせたペティアン風に仕上げています。

Q.どのような味わいに仕上がりましたか?

非常に爽やかで誰でも気軽に飲める、食前酒にもピッタリなワインになったと思います。乾杯につかってもらいやすい、プレ・ファースト・ヴィンテージに相応しいワインに仕上がっていると思っています。辛口で仕上げているだけではなく、ラブルスカ特有のフルーティーなフォキシーフレーバーをあえて前面に出しているので、どのようなお料理とも相性良く合わせていただけます。

Q.今後の展望をお聞かせください!

実は今、いろいろな品種を植えています。ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ヤマ・ソーヴィニヨンなど、本格的な西洋品種も含め栽培しています。そこで良いブドウができれば、それを使用したワインを造っていこうと思っています。

ただ「フジマル醸造所」のように、地域の農家からデラウェアを仕入れてお客さまに振る舞うというスタイルにも挑戦したいですね。もちろん、自社ブドウで品質の良いものを造り続けることは前提ですし、今後はしっかりとした樽熟成のスティルワインも造っていけたらと思っています。

井村さん、今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

最後に

新規参入するワイナリーが増えている今、そのことに苦言を呈する人たちも少なくはありません。しかし「金沢ワイナリー」はその中でも「農業」においてのノウハウを長年に渡り培ってきた、信頼できる人々が手掛けるワイナリーです。

またひとつ、日本に素晴らしいワイナリーが設立されたことを、ワインファンである我々は純粋に喜ぶべきではないでしょうか。

会社情報

株式会社 金沢大地
〒920-3104 石川県金沢市八田町東9番地
営業時間:10:00~16:00
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山梨県生まれの東京暮らし。フリーライター。音楽、ラジオ、ファッション、グルメなどさまざまなフィールドで活動中。甲州ワインに日常的に触れていたことで、知らぬ間にワイン通に…。ワインのちょっとした知識を小出しに紹介していきます。

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