知的障がい者とともにワイン造りを――ココ・ファーム・ワイナリーの理念とは?

栃木県足利市にある「COCO FARM & WINERY(ココ・ファーム・ワイナリー)」は、障がい者支援施設「こころみ学園」からブドウを購入し、さらに、こころみ学園の園生にワイン造りの作業を業務委託して、ワインを造っています。

そのワインの味は国内で高い評価を受けており、2000年開催の九州・沖縄サミットでの乾杯用や、2008年開催の北海道洞爺湖サミットにて総理夫人主催の夕食会、2016年開催のG7広島外相会合の夕食会で使用されています。

今回は、ココ・ファーム・ワイナリーがなぜ、知的な障がいを持つ人々とブドウを栽培し、ワインを造っているのか、その理念をうかがいました。

すぐわかる! ココ・ファーム・ワイナリーの歴史

 

高い場所から順に、
マスカット・ベリーA、リースリング・リオン、ノートン、プティ・マンサンが帯状に栽培


ココ・ファーム・ワイナリーを理解する上で、まず知っておきたいのは、その成り立ちです。

<概要>

・1958年(昭和33年) 教員だった川田昇氏が、学級の生徒と開墾してブドウ畑づくりを開始

・1969年(昭和44年) 同氏が知的障がい者更生施設「こころみ学園」を設立

・1980年(昭和55年) 有志の出資により、有限会社「ココ・ファーム・ワイナリー」を設立

「彼らの親が亡くなった時、彼らはどうなってしまうのか――」

川田昇氏は特殊学級の教員だった当時、甘やかされて育ったため生活力が身についていなかった、知的な障がいを持つ生徒たちの将来に危機感を抱きます。そこで、生徒たちと栃木県足利市の北部にある山の斜面を開墾して、野菜やブドウ作りを始めました。

畑作業を通して生徒たちは体力がつき、次第にたくましく健康的になっていきました。また、気持ちが安定し、普段の行動や生活にも良い変化がありました。3ヶ月に1度のお買い物実習時には、自分たちが造ったワインを購入する園生もいるほど、誇りの持てる仕事が日々営まれるようになりました。

川田氏は最期まで園生らを想い続け、足腰が弱り車いす生活となった後も、こころみ学園で園生と一緒に過ごしました。

ココ・ファーム・ワイナリーは、こころみ学園の創立者である川田昇氏の活動に共鳴した保護者など、有志による出資で誕生し、現在もその意思を受け継いで経営されています。

非効率でも、大切な仕事。なるべく人の手で

 

園生が慣れた手つきで行う「粒取り」。
裂果したブドウの実や、変色したブドウの実をハサミで取り除く


広報担当の越知さんに、こころみ学園とココ・ファーム・ワイナリーが60年にわたって大切に育んできた、“理念”についてうかがいました。

越知さん:「ココ・ファーム・ワイナリーでは、園生と一緒に行う作業が一番大事と考えています。たとえば草刈りは、手作業で刈っていきます。ひと通り作業が終わる頃には、新しい雑草が生えてきます。やりきれない作業ですが、自分の目で確認して、絶えず取り組んでいく大切な作業なんです。

 

なにより、ブドウを雨風から守る『傘かけ』や、不要なブドウを取り除く『粒取り』など、美味しいブドウ作りには必要な作業なので、丁寧にひとつひとつ手作業で行っています。」

雑草取りも除草剤を使わず手作業で行い、鳥からブドウを守るために缶を鳴らします。また、傘かけや粒取りまで、園生を中心に、全てが手作業で行われています。ココ・ファーム・ワイナリーでは、園生が生き生きと取り組める仕事のために、ブドウ栽培・ワイン造りが存在しているのです。

ココ・ファーム・ワイナリーのブドウ作りに関する記事は、こちら

丁寧に、大切に育てられたブドウが集まる醸造所

ワインの製造部長を務める柴田さんに、ワイン造りで心がけていることを伺いました。

製造部長の柴田豊一郎さん。
今後のワインの方針を決定する重要なテイスティング後に、貴重なお話を聞かせてくださいました。

柴田さん:「ココ・ファーム・ワイナリーのワインは野生酵母から造られていますが、醸造に関して、珍しいことは行っていません。醸造家の顔が見えてしまうと、人が造ったワインになってしまいますからね。ブドウの味わいを信じて、ブドウの良さを活かすように、畑から造られるイメージでワインを造ります。

 

また、楽しく飲めるワインであるためには、園生の楽しい雰囲気を織り混ぜることが大切だと考えています。ココ・ファーム・ワイナリーでは、ブドウの栽培・収穫・仕込み・瓶詰め・ラベルのシール貼りと、多くの人々が関わり、手間暇をかけてワインが造られています。

 

園生もワイナリーの仕事に選ばれた、という喜びを持って『次はいつやるの?』と意欲的に作業に取り組んでくれます。ココ・ファーム・ワイナリーならではの造り方や、楽しい雰囲気が、ワインの味わいに影響を与えていればいいなと思っています」

ココ・ファーム・ワイナリーには、「NOVO(スパークリングワイン)」や「農民ドライ(白ワイン)」、「風のルージュ(赤ワイン)」など、人気の高いワインが数多く存在します。また、ワイナリーの敷地内にあるワインショップには試飲スペースがあり、そこでおすすめワイン5種を500円で試飲することができます。

ココ・ファーム・ワイナリーの自家製ワインのすべてにQRコードが。
読み込むと、そのワインと合う料理など便利な情報が満載。

今回、足利市のブドウ畑で栽培したプティ・マンサンを使用した「2015 プティ・マンサン(白ワイン)」や「こことあるシリーズ2015 ツヴァイゲルト(赤ワイン)」など、その日のおすすめワインを試飲しました。

いずれのワインも、品種の持つ個性をのびのびと感じる豊かな味わいで、ワインとの出会いが楽しく、自然と会話も弾みます。家族や友人ともまた楽しく飲んで過ごしたいと、自宅用のワインも即決でした。

まとめ

今回、現地に足を運び、自然の中でコツコツと働く人々の様子を見学したり、美味しいワインと食事を味わったりしたことで、ますますココ・ファーム・ワイナリーのファンになりました。

ココ・ファーム・ワイナリーでは、ブドウ畑やワイン造り、収穫祭など、年間を通してワイナリーに足を運べます。また、ワイナリーの敷地内にあるワインショップ&カフェでは、食事からテイスティング、オリジナルグッズや自家製野菜のショッピングまで楽しめます。

旅行がてらワイナリーに足を運んでみたり、今夜のワインに、大切な人への贈り物に、ココ・ファーム・ワイナリーのワインをいかがでしょうか。

ブドウ畑やワイン造りなど、見学情報は、こちら

ワイン購入は、こちら

ココ・ファーム・ワイナリー敷地内のワインショップ&カフェについて

タクシー乗り場のすぐ目の前にある、ワインショップ&カフェ。

ココ・ファーム・ワイナリー ワインショップ&カフェ

〒326-0061 栃木県足利市田島町611

 

■ワインショップ

・営業時間:10:00~18:00

※店休日:収穫祭前日、年末年始(12月31日~1月2日)、1月第3月~金曜日の5日間

・試飲:ワインショップのカウンターで5種類のおすすめワインが試飲可能です。

1人500円(10:00~17:00)

 

■カフェ

・営業時間:11:00~17:30(ラストオーダー)

※店休日:収穫祭前日~当日の3日間、年末年始(12月31日~1月2日)、1月第3月曜日~金曜日の5日間

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