出典:marrenon.com
幼少の頃、『きょうはこの本読みたいな』シリーズというテーマの気分によっていくつかの短編が収録されているアンソロジーの児童文学が大好きでした。 だれかを好きになった日に読む本、うそをついた日に読む本、雨ふりの日に読む本……。どの本も珠玉の作品ばかりが詰まっていて、本当にそんな気分のときに読んでは感嘆した覚えがあります。
大人になってワインを飲むようになって、ふとこの児童文学のことを思い出したのは、ワインも同じように、だれかを好きになった日に飲むワイン、うそをついた日に飲むワイン、雨ふりの日に飲むワイン、というふうにその日の気分で飲みたいものが違ってくるところがとても似ていると思ったからです。
春も近づき沈丁花が庭先でつぼみをつけて独特な香りを漂わせるこんな季節、晴れた日の公園で飲みたいワインにぴったりのものを見つけたのでご紹介したいと思います。
寒くてカラッと晴れ上がった公園は懐かしい香りがする
リュベロン グラン マレノン
生産国:フランス、コート・デュ・ローヌ
葡萄品種;シラー70%・グルナッシュ30%
フランスはコート・デュ・ローヌの最南東にあるリュベロンの<グラン・マレノン>はこんな季節に公園で飲むにはうってつけのワインです。
飲んだのは2011年のもの。シラー70%にグルナッシュ30%というセパージュ比率にしてはスパイシーさよりも優しさを感じるワインです。抜栓した瞬間にスミレのような花の香りが溢れ出て、その香りの素晴らしさに驚いたくらいです。 本当は雨の日に飲みたいワインを探していたのですが、飲んでみたら果実味にセピア色がかかったような懐かしさの中にしっかりとした骨格やわずかなミネラルを感じ、これはどちらかというとカラッと晴れた日に飲みたい、と感じたのでした。
お花見の季節にはどちらかというとイメージ的には甘めの白ワインを選ばれる方が多いように感じます。おそらく暖かくなりつつある気候の中で飲みたいと思うワインに適しているからではないでしょうか。
そんな華やかな季節の前のちょっと寂しい季節、静かに公園で青空を見上げながら飲むとうっとりするような香りにほっとするような気持ちになれるかもしれません。
リュベロンはリゾート地・プロヴァンスの北にあります
リュベロンは1970年代に栽培家が努力した結果、1988年にAOCに昇格しました。リゾート地として有名なプロヴァンス地方の北側にあたり、ピカソを始めとする多くの芸術家が愛した自然がそこかしこにある土地です。
地中海性気候で土壌は石灰質。暖かみとミネラルを感じたのにはそういう理由があったようです。歴史的背景には文化的な側面があり、作品を産み出すことに疲れた芸術家たちを癒やすようなワインがたくさんあったのかもしれません。
真っ昼間の公園でプラスチックのワイングラスを傾けながら、かつての芸術家たちのように、懐かしく優しいワインに癒やされてみるなんていう休日も、たまにはよいかもしれませんね。