ブドウ栽培を行うワイン生産者は、ブドウの成長に合わせた栽培作業サイクルで動いています。春夏秋冬、その時期ごとに必要な栽培作業や醸造作業が行わるワイン造りは、まさに“自然のサイクルと共にある”、と言っても過言ではありません。ここでは、ワイン造りの1年間の流れや、ワイナリーツアーに最適な時期などを解説していきます。
1月~3月
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
1月から2月は、ブドウの生育サイクル的には、「休眠期」になります。ブドウの葉は落葉し、ブドウ樹だけの状態になっているため、生産者の主な仕事は「剪定」となります。
「剪定」は、ブドウの収量や品質を調節するために行われる作業であり、この作業が今年のブドウ生産量の役割を担います。また土壌の保水性や通気性を高めるため、「耕耘」の作業も行われる場合もあります。
生産者にとっては、畑作業がピーク期に比べると少なく、新酒の出荷作業も一端落ち着いた頃で、比較的動きやすい時期となります。
畑の風景などは少し寂しいのですが、生産者と出会えたり、生産者セミナーなども開催されることが多い傾向にあります。ワインの勉強、という意味ではこの時期がおすすめでしょう。
4月~6月
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
3月下旬から4月にかけて、気温が10℃を超えてくるとブドウの新芽が出てくる、「萌芽」の時期を迎えます。萌芽が始まると「芽かき」と呼ばれる、余分な芽を取る作業が行われます。新梢の伸びを調節することで、収量や品質の管理をすることができます。
その後、萌芽から70日前後で、小さく愛らしい白いブドウの花が咲く、「開花」の時期を迎えます。花は1週間ほど咲き、その後は受粉して実になっていきます。
ちなみに、一般的なブドウ品種はひとつの梢に対して2~4つの花穂をつけますが、多く結実させると品質が落ちる可能性があるため、開花前に「摘穂」と呼ばれる余分な花穂を取り除く作業が行われます。生産者としては徐々に畑作業が忙しくなる時期であり、ワイナリーに顔を出さない日も増えてきます。
しかし、ブドウ畑は緑の葉をつけた美しい時期になってきており、ワイナリーツアーには気持ち良い時期になります。レストランなどを有するワイナリーも多くあり、新緑の風景と春を感じさせる旬の食材とワインを、ランチなどで楽しまれてもいいでしょう。
7月~9月
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
7月頃、ブドウの実が成長していく、「果粒肥大・成熟」の時期を迎えます。この頃から、果房に栄養が行き渡るように新梢の先端を切断したり、病害予防のために日照や風通しを良くしたりしてブドウの品質を高めるための、「摘芯・除葉」などの作業が行われます。
また、結実後の果房を取り除き、残った果房の品質を高めるための、「摘房」という作業も行われることがあります。この頃、畑は一面緑色になり、ブドウの実も成長しているため、ワイナリーツアーにも人気が集まります。ただし、栽培農家にとっては大変忙しく、畑仕事量が多いデリケートな時期となるため、ツアーを組まない場所もあります。必ず、ワイナリーに確認の上、訪問するようしましょう。
10月~12月
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
早いところでは9月、一般的には9月下旬から10月にかけて、ブドウ畑は「収穫」の時期を迎えます。ブドウの糖度やフェノール量、酸度など、生産者によって判断基準が違うものの、この時期に待望の収穫となります。収穫されたブドウは、痛みや酸化を防ぐため、速やかに醸造所へ運ばれ、ワインが仕込まれます。
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
赤ワインか白ワイン、ロゼワイン、発泡性ワインなど、造られるワインの種類によって変わりますが、収穫されたブドウはこの時期に選果、破砕、圧搾、発酵、熟成、澱引き、清澄、濾過、瓶詰め…という流れでワイン醸造の工程を経ていきます。
熟成を目的とされたワインは、これから先も熟成されていきますが、新酒などは11月頃に出荷されていきます。ブドウの収穫が終了したブドウ樹の葉は、気温の低下とともに紅葉し、落葉したのち、休眠期へと進んでいきます。
ワイナリーツアーは秋がおすすめ
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
ワイナリーツアーで最も人気が高い時期は、秋です。大手ワイナリーでは収穫が体験できたり、今年の新酒のお披露目など、工夫がこらされたワイナリーツアーが組まれます。
出典:https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/blog/
また、ワイナリーによっては、生産者による今年のワイン解説と試飲会を組み合わせた、貴重でユニークなセミナーも開催されます。美しいブドウ畑の風景を見ながら今年造られたワインを楽しみたい、という方であれば、秋のワイナリーツアーがおすすめです。
まとめ
ここでは、1年間のブドウの生育サイクルと生産者の作業の流れを解説しました。ブドウ栽培の流れを知ることで、普段飲んでいるワインの飲み方もひと味変わってくるはずです。興味がある方は、ぜひワイナリーやブドウ畑に赴き、実際のブドウ畑の姿などを見てみてはいかがでしょうか。