ワインと言えばオシャレなフレンチかイタリアンしか合わない──。
昔からのそのような根強いイメージがありますが、近年ヨーロッパのワインだけではなくチリやアルゼンチン、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどニューワールドのワインも多く輸入されるようになり、ワインには必ずしもフレンチやイタリアンを合わせなければいけないという意見から「ワインとの食べ合わせは数多く未知数である」という意見に変遷しつつあります。
日本ワインブームの立役者である田崎真也さんも、ヨーロッパでは和食の持つ旨味の存在をあまり認めておらず、旨味と塩味を中心とする和食に対して、塩味と脂味を中心とする洋食に本来合うようにつくられているワインを合わせるのは難しいとしながらも、醤油や味噌に合うワインについてのご講演は非常に興味深いものがありました。
モツ煮込み屋でいつもメニューに赤ワインがあった
わたしも色々な食材とワインを合わせては日々その食べ合わせに驚いたりしていますが、行きつけのモツ煮込み屋ではメニューに赤ワインがあるのです。
そのモツ煮込み屋で出されるのはモツ煮込みやモツ刺、モツ焼串、サラダなどで、メニューに並んでいるのはビールや焼酎、ハイボールなど。その中で異彩を放っていたのが赤ワインでした。
その赤ワインをワイングラスではなく、ガラスコップに注いでもらうと懐かしい香りが鼻をくすぐって、たちまち食欲が刺激されるのです。
しかも、これがまたモツ煮込みとぴったり!長い時間をかけてコトコトと煮込んだモツたっぷりの煮込みを食べた後にワインを飲むと、煮込みのコクとじんわりと馴染み何とも癖になる旨味が口の中たくさんに広がります。初めて口にして以来、そのお店へ行くと必ず赤ワインとモツ煮込みを注文するようになりました。 ワインはフランスのコート・デュ・ローヌの南部のグルナッシュ主体のもので、居酒屋の大将が取引をしている酒屋さんに「モツ煮込みに合うワインを持ってきてほしい」と頼んで仕入れるようになったものなんだそうです。
まとめ
コート・デュ・ローヌのワインは一般的にシラーやグルナッシュが主体でスパイシーな肉料理や肉の煮込み料理などに合うとされていますが、まさか味噌や醤油や出汁をふんだんに使っているモツ煮込みに合うとは思ってもみませんでした。この食べ合わせを知っていた酒屋さんには拍手喝采です。
カウンターで赤ワインのコップを傾けながら、こんな楽しい食べ合わせにもっと出会えると素敵だな、と思ったのは言うまでもありません。ぜひ、皆さんも様々な料理との組み合わせを楽しんでみて下さい。