はじめに
ワインの栓には、コルク樫でつくられた天然コルク、金属でつくられたスクリューキャップ、プラスチックなどの人工樹脂でつくられた合成コルク、人工的につくられた素材を組み合わせたテクニカルコルク(天然コルク加工品)と、様々な種類があります。
今回は少しずつ普及し始めているスクリューキャップについてご紹介します。
スクリューキャップの登場は1970年
スクリューキャップは46年前ワイン市場に登場しました。コルクに比べて手軽に開栓することができ、天然コルク特有のブショネを100%防ぐことができます。 天然コルクを使用すれば3%~5%はブショネ(コルクによる劣化)が発生してしまいます。その手痛い現状を打破すべく、オーストラリアやニュージーランド、カリフォルニアの一部のワイナリーでは、スクリューキャップが登場後すぐに採用に踏み切りました。
今ではニュージーランドワインの90%がスクリューキャップを使用しており、フランスでもその影響は拡大しつつあるそうです。その背景には、スクリューキャップの白ワインは30年経っても劣化することなく良好なアロマが保たれているという報告がありました。
一方で天然コルクの場合はブショネの問題の他に、ワインを寝かせておかないと乾燥してコルクが痩せてしまい、劣化の原因になります。
合成コルクはブショネの問題もコルク痩せの問題もありませんが、長期熟成させる際にコルクが劣化してしまうため、若飲みのワインにしか適していません。
また、ある程度の劣化が軽減されるテクニカルコルクは、天然コルクを混ぜてつくられているため、ブショネの問題に突き当たってしまうそうです。
天然コルクを使い続ける理由
高価なワインに関しては、「スクリューキャップのワインは安っぽい」というイメージが強く根付いているため、使用することに抵抗感があるというのがワイン市場の現状です。
スクリューキャップが登場した当初は。その機能性や安全性に歴史がなく、テーブルワインに多く採用されていたことが「スクリューキャップ=安価」であるというイメージの根底にあり、未だにそのイメージは拭われません。
実際にワインの作り手たちも、25ドルを超えるプレステージワインにスクリューキャップを使用することに迷いがあるようで、機能性と市場での“ウケ”には温度差があり、ワインのように「雰囲気を重要視するお酒」に関しては影響が大きいようです。
まとめ
最近ではアメリカの高級ワインが採用し、フランスでもシャブリの老舗ネゴシアンであるドメーヌ・ラ・ロッシュが、ブルゴーニュの生産者としていち早くスクリュー・キャップを導入し、シャブリの品質向上に革新的な取り組みをしています。
長期熟成を必要とする赤ワインに関しては、新たな酸素を必要とせずワイン自体の還元酸化によって熟成するという考えがありますが、コルク生産量世界一のポルトガルでは「天然コルクが通すわずかな空気は熟成に必要なものである」という考え方を持っているそうです。
また、コルクを優雅に卒なく抜くソムリエの姿は美しく、これがスクリューキャップだとあまりの呆気無さに雰囲気に欠けてしまうと思う人が多いかもしれません。そう考えるとまだまだスクリューキャップの普及には時間が掛かるのかもしれませんね。