世界が注目する富士山ワイナリーに聞く!ワイン造りへのこだわりとは?

国内のみならず、世界でも注目を集めているワインといえば甲州ワイン。甲州種ブドウから造られる、日本を代表するワインのひとつです。

近年、各ワイナリーの努力によって甲州ワインの品質は著しく向上し、世界でも高い評価を獲得し続けています。しかし、そんな甲州種ブドウが数年前には絶滅の危機にあったことはご存知でしょうか。

その危機を救うためにプロジェクトを立ち上げ、甲州ワインが世界で戦えるワインとなるための道を自ら率先して切り開いたワイナリーがあります。それが、静岡県富士宮市にある「富士山ワイナリー」です。

今回、ワイナリーの社長、アーネスト・シンガーさんと、猪瀬まりさんにお話を伺うことができました。富士山ワイナリーの歩み、こだわりのワインづくり、そしてこれからの展望などを伺いました。

Q. 甲州種を助けるためのプロジェクトとはどんなものだったのでしょうか?

猪瀬  私たちのプロジェクト『甲州ワインプロジェクト(現在のジャパン ワイン プロジェクト)』がスタートしたのは2003年でした。当時、国産ワインはあまり売れておらず、甲州種ブドウ自体が絶滅の危機に瀕しており、ある山梨のワイナリーの副社長様が、弊社社長のシンガーに何とか助けて欲しいと熱心に東京まで通ってこられたのです。それでスタートしたのですが、シンガーのこのプロジェクトの目的は“農業を助ける”ということでした。

シンガー  甲州種は8世紀頃シルクロードを通って日本に運ばれた品種で、昔から生食用として販売されていました。日本のワイン醸造は食用として造ったブドウを江戸幕府に献上し、余ったブドウを保存のために葡萄酒を造った歴史から成り立っています。

農家は1年かけて気候と病気、動物、虫などと戦ってブドウ樹を育てて収穫します。しかし、1キロ200円前後で買われる甲州種よりも、品種改良した巨峰や桃など高く売れるものに変える農家が多く、甲州種は絶滅の危機に瀕していました。そこで、世界に通じるワインを造って輸出することが日本のワインを変えることだと考えました。

Q.プロジェクトが成功をおさめた経緯を教えてください

猪瀬 プロジェクトの立ち上げ後、世界に通じるワインを掲げ、私たちは2004年にOIV基準で100%甲州種のワインを造りました。そして、その年に私たちは『ワイン・アドヴォケート』誌のロバート・パーカー・jr氏を招き、全国のワイナリーを集めて山梨県でシンポジウムを行ったんです。 さらに、このプロジェクトをNHKが追いかけドキュメンタリー番組として全国放送したことがきっかけで、甲州ワインブームが来たんです」

シンガー パーカーは、我々の造った甲州ワインを「初めて飲むピュアで美しい日本のワイン」と評価しました。多くの日本のワイナリーにとって、日本ワインの可能性を感じられる結果だったと思います。

Q.ブドウ畑へのこだわりをお聞かせください

猪瀬 私たちは、現在6つの畑を持っています。5つは山梨の牧丘にあり、1つは静岡県の朝霧高原に富士サイトという畑を持っていますが、敢えてこの場所を選んだのは、360度パノラマで富士山が美しいからです。世界の銘醸地と言われるワイン産地はその景観も美しいですよね。朝霧高原は厳しい環境ですが、その方が良いブドウが育つのです。

シンガー 2004年に世界基準でワインを造った時、山梨の棚栽培のブドウを買ってワインを造りました。パーカーも絶賛してくれた素晴らしいワインができましたが、これからはよりレベルの高いワインを造らなければならないと感じていました。そのためには、良い甲州ブドウを作る必要があります。

そこで、私たちは不可能と言われていた甲州種の垣根栽培に挑戦をしました。

実験栽培は長野県の上田、塩尻、山梨県の牧丘、静岡県の朝霧高原で行い、上田、塩尻、牧丘では見事に成功しました。残念ながら朝霧高原ではコガネムシの大群に襲われ、全滅してしまいました。また、新しく原の富士山の麓で栽培をしています。

Q.甲州種ブドウおよび、垣根栽培へのこだわりを聞かせてください

シンガー 甲州種の栽培は今もなお棚栽培が圧倒的に多いです。理由は棚栽培の方が1本当たりの収量が垣根栽培に比べて20~40倍多いので、凝縮感のあるワイン用のブドウができるからです。

我々が垣根栽培を採用しているのにはさまざまな理由がありますが、棚栽培は光合成が葉の上側だけに対し、垣根栽培は日当りを考えて垣根を作ることで、より健全でワインに適した品質の高い甲州種が出来あがるからです。

猪瀬 なぜ甲州種にこだわっているかというと、ワイン用のヴィニフェラ種であること、そして、日本の風土の中でずっと育てられてきた品種だからです。

シンガー 甲州種は日本のブドウだからこそ、日本の食事に合います。フランスも、イタリアも、その国で生まれたブドウで造られたワインはその土地の料理に最も合います。当たり前のことです。

また、今の日本ではさまざまな外国品種を栽培したり独自の醸造方法でワインが造られています。ワインには色々あることはとても良いことです。しかし、外国品種を日本で造っても、最高のポテンシャルを出すのは難しいと思っています。

例えば、世界の2、3千円程のテーブルワインと肩を並べるワインを日本で造る場合、1万円を超えるワインを造ることとなります。外国品種の日本産ワインを海外へと輸出した際、同じレベルのワインで価格差が数倍ある商品が両隣にあった時、消費者がどちらを手に取るかは言うまでも無いからです。

山梨県生まれの東京暮らし。フリーライター。音楽、ラジオ、ファッション、グルメなどさまざまなフィールドで活動中。甲州ワインに日常的に触れていたことで、知らぬ間にワイン通に…。ワインのちょっとした知識を小出しに紹介していきます。

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