ナチュラルチーズがどのように造られているか知っていますか?

チーズはミルクを固め、微生物や酵母の働きで発酵させた食品ですが、具体的にどのように造られているかご存知ですか?チーズの造り方を知れば、チーズの外見や質感、そしてあの個性的な香りにはちゃんと理由があることがわかります。

今回はナチュラルチーズがどのように造られているのか、タイプ別にご紹介したいと思います。

ミルクを固める3つの方法


個体であるチーズを造るためには、まず最初に液体であるミルクを固めなければなりません。その方法は大きくわけると3つあります。

1つ目は「酸凝固」。乳酸菌等を添加して凝固します。昔、インドではレモン果汁のような酸性物質を添加してミルクを凝固しチーズを造っていたこともありました。酸凝固で造られるチーズはヨーグルトのような水分の多いフレッシュなチーズになります。

2つ目は「熱凝固」。その名の通り熱を加えて凝固します。ミルクを温めると薄い膜ができますが、その膜はタンパク質でチーズの主要成分と同じです。

3つ目は「レンネット凝固」。レンネットとは凝乳酵素のことで、現在、大半のチーズがこのレンネットを使って造られています。低水分で長期熟成タイプのチーズの製造に適しています。

子牛の胃袋の中にある酵素「レンネット」


ミルクを固める方法として、「酸凝固」と「熱凝固」については想像に難くないですが、「レンネット」とはいったいどんな酵素なのでしょうか?実は、牛、山羊、羊など、反芻動物の子供の第四胃に含まれている酵素なのです。

反芻動物の子供、例えば子牛は、生まれてからしばらくの間は母親の乳を飲んで大きくなります。母親の乳の栄養を効果的に消化吸収するために、子牛の胃の中には乳の栄養分と水分を分離させる酵素が存在するのです。その証拠に子牛が大きくなって草を食べ始めると、その酵素は必要なくなるので分泌されなくなります。

ですが、子牛の胃袋からレンネットを得るには大量に子牛を殺さねばなりません。それは酪農家にとって大変な負担で現実的ではないことから、現在、チーズ造りには植物から抽出される植物性のレンネットや、微生物レンネットが主に用いられています。

それにしても、子牛の胃袋の酵素でミルクを固めることに成功した昔の人の知恵には感心せざるを得ません。チーズ造りは言わば、子牛の胃袋の中で行われていることを人為的に行っているということなのです。


大半は廃棄されてしまう、栄養豊富なホエイ


凝固した乳(=カード)は、その度合いにもよりますが、基本的にはプレーンヨーグルトのように柔らかく崩れやすい半個体の状態です。そして、そのカードをカットすると水分が滲み出てきます。この水分がホエイです。

チーズ製造時にはほとんど廃棄されてしまうホエイですが、実は高タンパク低脂肪で栄養分が高く、昨今は優れた栄養食品として見直されています。世界最高峰の生ハムと言われるイタリアのパルマ産生ハムは、同じ地方で造られるチーズ「パルミジャーノ・レッジアーノ」を造るときに出るホエイを与えて育てられた豚で作ること、と定められています。日本でもホエイを飲んで大きくなった豚は、「ホエイ豚」と言って美味しい豚肉で有名です。

水分と分離したカードは少しずつ収縮、そしてチーズに


水分と分離したカードは少しずつ収縮し、凝固します。これがフレッシュチーズです。フレッシュチーズを脱水したものがフロマージュ・ブラン、加熱した後に脱水するとカッテージチーズになります。

そして、フレッシュチーズに塩を加え、適度な環境に置くこと、つまり熟成させることで、様々なタイプのチーズが出来上がります。

白カビタイプ


カットしたカードを型に入れ、自然にゆっくりとホエイを排出させます。そのため水分が多く、雑菌が繁殖しやすいので表面に塩をふって汚染を防ぎ、その後カビを繁殖させます。

ウォッシュタイプ


ホエイの排出までは白カビタイプと同じ方法です。成形したてのフレッシュチーズは栄養豊富なので、すぐに表面に微生物が付着しカビが発生します。それを塩水等で洗ったり拭き取ったりしながら独特の風味を生み出します。

青カビタイプ


原料乳に青カビ菌を添加してからカードを生成。その後、カットしたカードをもみほぐして隙間ができやすいように成形し、表面に塩を刷り込みます。青カビの成育には酸素が必要なため、さらに串で多数の孔をあけ熟成させます。

セミハード・ハードタイプ


カードを脱水後プレス、そして加塩し熟成させたものがセミハードタイプ。ハードタイプは、カードをプレスする前に加熱します。加熱することでよりカードが固くなり、緻密で長期熟成に絶えうるチーズになります。

タイプは同じでも造り方は千差万別


今回はとても簡単にチーズの製造方法をご紹介しましたが、同じタイプのチーズであっても、造られている土地によって気候風土は異なります。また、原料である動物の乳は、育て方によって風味が随分変わりますから、チーズの作り方も千差万別です。

ただ、どうやってチーズが造られるかを少しでも知れば、味わいもひときわ感慨深いものになるのではないでしょうか?チーズを選ぶ時にも是非参考にしていただけたらと思います。

参考文献:『チーズの教本2016』 著者/NPO法人チーズプロフェッショナル協会

ワインコーディネーター。大学では仏文学を学び、渡仏。帰国後は都内屈指のワイン専門店に十数年勤務。現在は主にワインに関連するイベントや飲食店等のプロデュースを行う。JSA公認ワインアドバイザー。

おすすめの記事

もうワイン選びで失敗しない!良いワインショップ選びのポイントとは?

家でワインを楽しむワイン好きな皆さんは、いつもどこで購入していますか?ワインは重いのでネット通販を利用される方も多いでしょう。しかし、ワイン初心者にとってネット上でワインを選ぶのはなかなかハードルが高いかもしれません。そもそも、実店舗でも通販サイトでも、どのショップで買い物をしたらよいのかということから悩んでしまいます。 そこで今日は、ワイン選びで失敗しないためにも、良いワインショップを見分けるポイントをお伝えしたいと思います。

イタリアワインの格付け「DOCGとDOC」の違いとは?

イタリアワインのラベルやキャップシールに「DOCG」「DOC」という文言を見たことがありますか?この言葉はいったい何を意味しているのでしょうか。 今回はイタリアワインの格付け「DOCG」、「DOC」についてご紹介いたします。 ヨーロッパのワインには品質分類がある イタリアを含む、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国にはワインを品質で分類したヒエラルキーがあり、どの国も大枠は同じようなものになっています。 簡単にいうと、上の分類になればなるほど、厳しい法律が定められていて格が高くなる、またその見返りとして土地の名前を名乗ることが認められているというものです。フランスの最上級の等級はAOC(Appellation d'Origine Contrôlée)と呼ばれており、それと同じ位置づけにあるイタリアの等級がDOCG(Denominazione di Origine Controllata e Garantita)なのです。

ワイングラスでの乾杯で、音を立てるのはマナー違反?

ビールジョッキでは豪勢を音を立てても良いけれど、ワイングラスで乾杯するときは決してグラス同士をぶつけてはいけない──日本では、それがマナーとして認識されています。 しかしながら、創業250年の歴史を誇る老舗ワインブランド・リーデルは、2011年に「乾杯でグラスをぶつけるのはルール違反ではない」と正式に表明しています。 ただし、繊細な縁同士をぶつけては割れてしまう可能性があるため、正式な乾杯方法は傾けたワイングラスの腹同士をぶつけるのだそうです。 リーデル家10代目当主であるマキシミリアン・リーデル氏も「ワインは色や香り、味わいだけでなく、音も含めて五感で楽しんでくださいね」(参考ページより引用)と発言しており、正しい乾杯方法や奏でられる音色も動画にて確認することができますよ。

関連コラム

飲酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されております。 Copyright © 家ワイン All Rights Reseved.