「このワイン、ブショネだね」 ワインを飲んでいたら、こんな台詞を耳にしたことがある人は少なくないのではないでしょうか?
ブショネとは劣化したワインを表す用語で、コルク臭とも言われ、ブション(コルク)に起因する品質劣化のことです。コルクの原材料であるコルク樫に元々存在していたか、成形の過程で発生した化合物TCA(トリクロロアニゾール)が原因となり、不快な臭いを発します。
僅かなブショネから、顔を近づけただけで顔をしかめてしまうほど重度のものまでありますが、飲んでしまっても健康に害はありません。ブショネは保存環境が理想的でも発生してしまうものなので、ある意味で不可抗力といえますが、今回はこの「ブショネ」についてご紹介します。
ブショネに当たる確率は?
天然コルクが少しでも使われているコルクであれば、ブショネのワインとなってしまう可能性があります。
ブショネの原因となるTCAが混入する確率は、実に100本中3本~8本と相当な量です。しかし、これは各国で統計に違いがあり、多くのワインを扱っているソムリエでもブショネのワインに当たったことがないという人もいるため、「ワインを100本買ったら3本~8本、必ずブショネ(TACが混入しているワイン)が混じっている」というわけではありません。
また、合成コルクや、スクリューキャップ型のワインも登場し、ブショネは少しずつ減ってきています。
ブショネの見分け方
劣化したワインには、ブショネの他にも酸化がいきすぎてしまったもの、熱で劣化してしまったものがあります。また、特に醸造過程で酸欠になったことで発生する硫化水素に由来する還元臭はブショネに間違われやすいので注意が必要です。しかし、これは時間が経てば消えてしまうので、判別が比較的容易です。
そして、いわゆるビオ臭と呼ばれる自然農法でつくられたワイン独特の匂いもブショネと間違われることがあります。しかし、これに関しては不快な臭いというよりも、そのワインの個性が発する匂いゆえに劣化とは言えません。
ブショネはカビ臭や段ボールのような臭いが特徴的です。酸っぱい臭いは酸化臭、不快な焦げや蒸れた臭いは熱劣化であり、劣化には違いがありませんがブショネとは違います。
ちなみによくコルク外側(瓶口ではない方)にカビが生えていることがありますが、これは湿度の高い適切な場所できちんと保管されていた証拠なので、ブショネとは関係ありません。
もしブショネのワインに当たってしまったら……
レストランでボトルのワインを開けるときは、ソムリエが最初にテイスティングを促してくれます。このときにブショネであれば、もちろんその場で交換が可能です。
お店で購入したものについては各店舗で対応が違うので注意が必要です。例えばワイン専門商社であるエノテカでは、ブショネのワインへの対応をサイトに明記していますが、別の大手ワインショップではしっかりと「ブショネについて返品や返金、交換は応じられない」と明記してあるところもあります。
また、日本酒やビールなど別のお酒を得意としているお店はブショネの存在すら知らない場合があるため、交換・返品についてはあまり期待しないほうがいいかもしれません。
高価なワインはブショネのワインへの対応について調べてから購入することを強くオススメします。それこそ10年も寝かして楽しみにしていたワインがブショネだった上に交換も利かない、なんてことになったら、せっかくの楽しい気持ちも台無しですものね。
まとめ
いかがでしたか? 不快な臭いが必ずしもブショネではないことが、お分かりいただけたと思います。特にブショネと似ている還元臭が指摘されることが多発していることから、レストランもワインショップもブショネの指摘には敏感になっているそうです。
できれば一度、懇意にしているワインを取り扱う酒屋さんやワインスクールなどで実際にブショネの臭いを嗅いでみることをオススメします。
しかし、それが叶わない場合は「ブショネと還元臭は似ていること」そして「還元臭は時間が経てば消えること」を踏まえてワインに臨むようにしてみてくださいね。