チーズの種類や銘柄はなんとなく知っていても、そもそもチーズはどういう食品なのか、また、他の乳製品との違いを正確に説明できる人は案外少ないかもしれません。今回は、チーズの成り立ちや、チーズを始めとした乳製品についてご紹介します。
チーズはどうやって生まれたのか
チーズは加工食品の中で最も古い食べ物の一つと言われています。人間が野生動物を家畜化し、搾乳し始めたのは、諸説あるようですが紀元前7000年頃、チーズ造りは紀元前6000年頃には始まっていたとされています。
家畜は肉を食べてしまえばそれで終わりですが、乳は母獣が健康でいるかぎり獲得することができ、その乳をうまく利用することで、人間は家畜と共存し、食物を安定的に得ることができるようになりました。
チーズが生まれた時の有名な逸話があります。
「アラビアの商人がラクダに乗って砂漠を横断している時に、乾燥した羊の胃袋の水筒に入れていた乳を飲もうとしたら、透明な液体と白い個体に分かれていて、その液体(ホエイ)によって喉の渇きが癒され、白い塊(カード=チーズの原形)によって飢えが満たされた」というものです。羊の胃袋から凝乳酵素であるレンネットが溶け出し、いつの間にか水筒の中でチーズが造られていたのです。
この話が事実かどうかはわかりませんが、チーズが偶然の産物として生まれたことは間違いないでしょう。そして、長い歴史の中で、人類は工夫を重ね、微生物の発酵と熟成という作用によって、より質の高い食品へと変化しました。
チーズの定義
長い歴史の間でさまざまなチーズが作られてきましたが、その種類はナチュラルチーズとプロセスチーズの二つに大きく分けられます。
食品衛生法に基づく「乳および乳製品の成分規格などに関する省令」によると、ナチュラルチーズは「乳、バター、クリーム、又はこれらを混合したもののほとんどすべて、又は一部のたんぱく質を凝固させた凝乳から、水分の一部を除去したもの、またはこれらを熟成させたもの」です。
プロセスチーズは「ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したもの」とありました。
簡単に言い換えれば、ナチュラルチーズは「乳を凝固し、乳酸菌などで発酵、熟成させたもの」で、プロセスチーズは、「ナチュラルチーズの保存性を高めるために加工したもの」と説明することができます。
チーズ以外の乳製品
チーズ以外の身近な乳製品についても整理してみました。チーズ同様これらの乳製品は、栄養豊富な生乳をできるだけ食生活に取り入れられるよう、知恵と工夫を重ねて生み出された食品です。
・牛乳……生乳(搾ったままの牛乳のこと)を加熱殺菌したもの。私達が飲むために作られた牛の乳。
・ヨーグルト……牛乳などに乳酸菌や酵母を加えて発酵させたもの。
・クリーム……遠心分離機などを使用して生乳中の乳脂肪を集めたもの。
・バター……生乳から得たクリームを撹拌し、脂肪粒を集めて固めたもの。
まとめ
近年、私達日本人にとってチーズは随分身近になりましたが、その歴史は壮大で、知れば知るほど奥が深い食品であることがわかります。皆さんもチーズを食べる時はちょっと面倒でも食べる前にネットでそのチーズについて検索してみてはいかがでしょうか?チーズの由来や、どこで、どうやって造られているのかを知れば、より美味しくいただけると思います。
チーズの教本 2016: 「チーズプロフェッショナル」のための教科書 (小学館クリエイティブ単行本)
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「チーズの教本2016」 著者/NPO法人チーズプロフェッショナル協会
「チーズの科学 ミルクの力、発酵・熟成の神秘」 著者/齋藤忠夫