パン好きの間では知らない人はいないというほど、人気の自家製酵母のパン屋「粉花」。なんと言っても魅力はその香りです。お店の前を通りかかったフランス料理のソムリエが、一口も食べないうちに自分の店で扱いたいと相談されたほど。
そんな「粉花」を営む藤岡真由美さんに、今回、「粉花のパン作り」や「パン香り」、そしてソムリエさんのお話しをお伺いしました。
素材にこだわったパン作り
粉花の人気はその素材にもあります。北海道の小麦粉と沖縄の塩、そしてオーガニックレーズンを使った自家製酵母で作られます。酵母液はオーガニックレーズンと水で作っていて、その酵母液のみでパン生地を作る「ストレート法」を採用しています。
ストレート法はレーズン酵母の風味をより強く感じられますが、発酵が安定しないので非常に難しい手法です。それだけに発酵状態を見守り、パン生地との対話に気持ちと時間を割かなくてはいけません。
また、気温が日々変化することで、酸味が出たり膨らみにくかったりするのは日常茶飯事です。「でも、それも含めてパン作りが好き。」と真由美さんは笑っていました。
フランス料理店のソムリエも絶賛する香り
粉花のパンは全てほんのり甘いブドウの香りがするんですが、その香りは、フランス料理店「ガンゲット ラ シェーブル」のソムリエがフラッと立ち寄った時、「酵母のいい香りがする」と絶賛したほどです。そのソムリエさんは、一口も食べてないのに、レストランでカンパーニュを扱いたいと、真由美さんに相談したそうです。
フランス料理店のソムリエも気に入った香りは、酵母が関係しています。オーガニックレーズンから作られる酵母だからこそ、イーストやブリオッシュなどシャンパーニュや白ワインで感じる香りを感じました。
レーズンから作る酵母液
粉花のパンはどれもレーズン酵母の香りがメインです。ブドウが入っていないのに「ブドウの味がする」とお客さんに言われることもあるとか。
実際にお店で作られているレーズン酵母を見せてくださいました。
酵母が起きるまでは約一週間。オーガニックレーズンと水を合わせて置いておくと、自然と発酵してきます。レーズンを使うのは、糖度が高く酵母を起こしやすいからです。また、レーズン酵母の風味がパンに合うなと感じるからです。
アルコール発酵で発生した炭酸ガスが小麦の膜を膨らませるので、元気な酵母液作りがパン作りの土台になるのです。
白ワインのような風味の酵母液は、力強い発酵力でパンを膨らませ、よい香りを与えています。
パン生地を作り一次発酵に8時間かけた後、一晩冷蔵庫で寝かせます。長期熟成がもちもち感を生み、もち粉が入っているのかと聞かれるほどです。
酸味があるパンを求めるお客さんもいますが、毎日食べても飽きないパンを焼くために酸味が出ないように調整します。
粉花で人気のパン
柔らかいパンが好きな人のために、きび糖とバターを使った丸パン。両手で割ってみると中身が詰まり、地層のような表面から生地がしっかりと練りこまれているのがわかります。バターの香りがあり、もっちりフワフワとしています。素材の味と香りがしっかりと感じられるパンです。
しっかりと焼きこまれたカンパーニュは、砂糖も油脂も入らないシンプルな生地で、噛めば噛むほど味わい深い余韻が残ります。香ばしい小麦とレーズンのほんのり甘い香りが鼻を包んでくれます。
パンに対する思い
お客様にパン生地自体の美味しさを味わっていただきたいので、味のバリエーションは増やさずに素材の味が伝わるパンづくりを大切にしている粉花。
「パンをつくる上で大変なことは、気温が日々変化することで酸味が出たり、膨らみにくかったりするのは日常茶飯事です。でも、それも含めてパンづくりが好き。」と真由美さんは微笑みます。
最後に
「大事に焼いたパンを笑顔で売って、大事に食べてもらいたい」と真由美さんはおっしゃいます。そういう純粋な思いが、お店の雰囲気やパンからも伝わってきました。
取材中に訪れたお客さんも、笑顔で訪問してくるんですよね。食べる人を笑顔にするって素敵だなと思いました。多くのお客様の日常に溶け込んでいる粉花のパン。ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
粉花
〒111-0032 東京都台東区浅草 3-25-6-1F
パンの販売時間 10:30~売り切れまで
カフェ 不定期
電話番号 03.3874.7302 定休日 日.月.火.祝
パンは午前中に売り切れる場合もあります。