知っておいて損は無い!白ワインにおける「スキンコンタクト」とは?

 

ワイン好きの方であれば、「スキンコンタクト」という文字を目にしたことがあると思います。「長時間のスキンコンタクトを採用したワイン!」とか、「スキンコンタクトによる魅惑のオレンジワインが登場!」など、近年ワインショップやネットショップなどで、この文字を多く目にするようなりました。しかし、スキンコンタクトは完全に専門用語であり、詳しく知らない方の方が多いのではないでしょうか。

今回はそんなスキンコンタクトについてまとめてみました。今後、ワインを購入される際の参考にしてみてください。

スキンコンタクトとは?

スキンコンタクトとは、「白ワインの製造工程において、果皮と果汁を一緒に保持し、果皮の成分を抽出させる」という技術のことです。

通常、白ワインはブドウを破砕した後に直ぐに圧搾され、果汁のみが発酵工程へと進みます。一方、スキンコンタクト法を取り入れる場合、白ブドウを破砕した直後に圧搾をせず、一定期間果汁に果皮を浸します。その後、通常通り果皮と果汁が圧搾され、その果汁のみがアルコール発酵へと進むのです。

簡単な説明ではありますが、要するにスキンコンタクトが採用されたワインというのは、「アルコール発酵前に、果皮や種子の成分を果汁に移してから発酵させた白ワイン」と理解しておくと良いでしょう。

スキンコンタクトによって何が得られるのか?

スキンコンタクト法を採用した場合、その白ワインにはどのようなメリットを得られるのでしょうか。

例えば、「香りが豊かになる」とか「独特な色合いになる」とか「厚みがでる」などが、一般的に言われているスキンコンタクトのメリットです。

基本的には、リッチな白ワインを目指すためにスキンコンタクトは行われており、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、リースニング、甲州などでも積極的に採用されているようです。では、もう少しこのメリットについて深堀りしていきましょう。

ブドウの持つ香りついて

まず、スキンコンタクトと香りの関係性を探る前に、ブドウとその特徴香について知っておきましょう。

ブドウが持つ特徴的な品種香というのは、基本的に多くが果皮に含まれているといわれています。例えば、フラネオール(イチゴの香り)やリナロール(バラの香り)、テルピネオール(ヤマユリの香り)などです。

また、甲州ブドウの果皮にはβダマスコン(トロピカルフルーツ)といった香りも多く含まれていることが分かっており、今では研究が進み、多くの甲州ワインでこの香りを感じられるようになりました。こういった香りの多くは「テルペン類」と呼ばれており、非常に良い香りを呈する物質なのですが、如何せんこの香り成分たちは、糖と結合してしまっており、その香りを感じることはできません。

これらテルペン類は、アルコール発酵時の酵母の働きにより、糖と切り離されます。つまり、酵母のおかげでワインの状態になるとブドウ品種の特徴香が感じられるわけです。

スキンコンタクトによって香り成分を多く抽出!

このことから、果汁中に香りの前駆体となる成分が多ければ多いほど、アルコール発酵時にその特徴香が発生しやすくなることが分かります(もちろん、そんな単純なものではないでしょうが)。

前述したように、スキンコンタクトは、果皮と果汁を一定期間浸漬させる技術ですので、果皮に含まれる成分をしっかりと果汁へと移すことが可能です。つまり「スキンコンタクトを採用する」ということは、それをしなかった白ワインよりも、「より多くの香りを持つ白ワインを造ること」が狙いだったのです。

味わいについて

では、スキンコンタクトを行った場合の白ワインの味わいについてはどうでしょうか。スキンコンタクトは、果皮に含まれる成分を果汁に移す技術ですが、同時に種子からもその成分が少量ながら抽出されることになります。

果皮からの抽出スピードに比べて、種子は緩やかといわれていますが、長時間のスキンコンタクトを行った場合は、双方が持つ成分が白ワインの果汁中に含まれることとなります。

スキンコンタクトを行った白ワインには、「厚みがでる」といわれていますが、これは可能性として果皮と種子由来のフェノール類が関係していると思われます。

果皮と種子には、カテキン類やアントシアニン類の「フラボノイド類」と没食子酸や水溶性カテキン、リスベラトロールを含むスチルベン類が含まれます。さらに、赤ワインに比べると少ないものの、同時にポリフェノール化合物のタンニンも含まれ、渋みがある白ワインとなります。

ただ、ワインの香味を形成している成分は、ファクターが多過ぎるために、これらフェノール類がどれほどワインの香味を形成するかは、断言できません。

とはいえ、明らかに通常の白ワインに比べて、これら成分が含まれているわけですから、「フレッシュ&フルーティー」な白ワインとは、別物のワインとなることは間違いなさそうです。

色について

スキンコンタクトをしたワインの中には、「オレンジワイン」と呼ばれるワインがあります。例えば、甲州は「グリ(灰色)」と呼ばれる果皮の色を持つブドウ品種のため、緑色のブドウに比べ、黒ブドウに近い色となります。

赤ワインのあの“赤色”は、果皮に含まれるアントシアニンが関係しているのですが、グリ系ブドウの場合は、多少なりともスキンコンタクトによりアントシアニンが果汁へ移り、こういったオレンジ色を形成していると考えられます。

ただし、スキンコンタクトは酸化しやすい状況で行われている場合も多く、過剰な酸化によって生成されてしまうフラボノイドポリマーによって褐色化することもあるようです。

もちろん、品質の優れたオレンジワインが殆どでしょうが、なかには劣化した色合いを逆手に取ったというワインもあるようなので注意が必要です。

スキンコンタクトは熟練技

スキンコンタクトを採用した白ワインは、世界中に多く存在していますが、とても難しく熟練の技が必要だといわれています。

どの品種でスキンコンタクトを行うか、液体の温度管理、浸漬の時間、その後の発酵と熟成方法…など、最終的にどういった白ワインを目指して醸造するのか明確にしておかないと、ただ渋みと苦みの強い、褐色化した白ワインとなってしまいます。

特にフェノールを多く抽出することになるため、バクテリアの汚染からワインを守るための細心の注意が必要となります。

ひとことで、「スキンコンタクトをした白ワインです」といっても、市販するまでには大変な苦労と労力がかかっていることを忘れてはなりません。

最後に

白ワインを購入する際、スキンコンタクトが行われているか分かるようでしたら、ぜひ普通のフレッシュ&フルーティーな白ワインと飲み比べてみてください。

そして、その味を自分で評価してみましょう。銘柄や産地だけではなく、こういった製造工程の違いで飲み比べるのも、ワインの楽しみのひとつとなるはずですよ。

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山梨県生まれの東京暮らし。フリーライター。音楽、ラジオ、ファッション、グルメなどさまざまなフィールドで活動中。甲州ワインに日常的に触れていたことで、知らぬ間にワイン通に…。ワインのちょっとした知識を小出しに紹介していきます。

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