知っていますか?ワイングラスと味覚の関係

ワイングラスは、なぜあのような形をしているか知っていますか?

実は、ワインの繊細な風味や味わいを、より強くしっかりと感じられるように研究された結果、あのような形状になったそうです。今回はその秘密を、舌の味覚とリーデル社のグラスから探っていきましょう。

舌は味を感じる箇所がわかれている?!

 

出典:http://www.timeskuwait.com/

1901年に発刊された「味覚分布地図」内で、舌はそれぞれの部位で感じる味が明確に分かれていると発表され、世間に広まりましたこれは、甘味は舌尖部、酸味は舌縁部、苦味は舌根部のみで感じ、塩味は幅広い部位で感じられると定義をしたものです。

その後、1990年頃には否定されるようになり、現在では「味の基本となる5味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)は、舌全体で味を感じる最低値(認知閾値)に部位別の差異はない」とされています。

しかしながら、2010年に発表された論文(※)によると、実験の結果、舌全体に5味を感じる箇所があるものの「苦味以外は、味覚分布地図を支持する結果になった」とされました。

苦味については、薄い場合は舌尖部で強く感じ、濃い場合は舌後方の舌縁部で強く感じる結果が表れたそうです。

つまり、「全ての部位で5味それぞれを感じるものの、それぞれの部位で強く感じる味覚は、味覚分布地図が示すものに近かったという結果が出たのです。

(※)小林三智子さんが、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科生体情報科学分野の、戸田一雄教授ならびに、岡田幸雄准教授の指導のもと完成させた論文。

グラスの形状は味覚を考慮してつくられている

このことから、苦味すなわちタンニンや酸味を強く感じたい場合は、舌の後方の縁に当たるような形状のグラスにすれば良く、その逆も言えることがわかります。そして、甘味を強く感じたい場合は、舌の先端に液体を導くことに重点を置く必要があります。

それゆえリーデル社は、赤ワイン用のグラスに関して、グラスのボウル部分に溜まる液体の量から、傾けたときに流れる勢いを研究しました。さらにグラスの縁を研磨することで、舌の上からスムーズに奥に流れ込むつくりに仕上げています。

そして、酸味が強めの赤ワインの場合は、酸味を強く感じさせないように、グラスを傾けた際、飲み口の部分から液体が細く流れ込むつくりになっています。

また、白ワインの中でもシャンパン用のグラスは、豊かなブーケと酸味を感じられるよう、飲み口から流れ込む液体は比較的幅広く、ボウル部分は細長いつくりになっています。

酸味が強くフルーティーなワイン用のグラスは、液体が舌先に導かれ、甘味由来の果実味を強く感じられるようにつくられているそうです。

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旨味に対する舌の特性と酸味の関係

個々のグラスは、酸味を感じる部位への接触について、特に考え抜いてつくられていることが解りますね。実は、酸味や苦味を強く感じる部位は、旨味を強く感じる部位とほぼ同じと言われています。

しかし旨味の感受性は少々特殊で、舌の後方の縁、酸味や苦味を感じる部位で認識されるものの、味を感じる物質が接触したときよりは、後味として残る特性があるそうです。

酸味や苦味を感じる部位への液体の接触は、同じ部位で旨味も感じることから、舌への接触に繊細さを要される、という事なのです。それゆえに、リーデル社を始めとするワイングラスの造り手が、グラスの形状にこだわり抜いたことが窺えますよね。

もしイマイチ信じられないという方は、ワインをワイングラスと茶飲みなどの異なるグラスに注ぎ、飲み比べてみてください。同じワインであるのに、全く違った味がして驚いてしまう方が多いと思います。

最後に

ワインは繊細で難しいと言われがちですが、それゆえに素晴らしい美味しさに出会う可能性を秘めたお酒です。ワイングラスの特性を感じつつ、ワインを美味しく楽しんでくださいね。

【参考

・「味覚感受性の評価と測定法~若年女性の味覚感受性を中心として~」

小林三智子 日本調理科学会誌 Vol. 43,No. 4,22~227(2010)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/43/4/43_221/_pdf

・リーデルグラスの秘密

http://www.riedel.co.jp/about-riedel/why-riedel

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お酒と書籍をこよなく愛すワイン好きなライターです。ワインの魅力にとりつかれ、知識を深め、ワインエキスパートの資格を取得。「ワイン=敷居が高い」という既成概念を壊していきつつ、一緒にワインの楽しさを探っていきましょう。

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