【連載】デートで飲むシャンパーニュのウンチク(ヴーヴ・クリコ 後編)

 

【 登場人物 】

葉山さん:ワインの世界を新しい切り口で教えてくれる、人気ワインライター

 

マナブ:社会人3年目、ワイン初心者で彼女募集中のイマドキ風な若者

 マナブ君を相手に、「初デートでオーダーするのはシャンパーニュ」の話が続く。

 

「ヴーヴ・クリコは、このオレンジ色がキレイだろ? 例えば、土曜日のランチで、美女が4人坐ったテラス席の真ん中に、このオレンジ色のボトルがあると、物凄くスタイリッシュだよね」

 

「このオレンジ色って、さっき乗ってきた地下鉄銀座線の色に似てますけど、関係があるんすか?」

 

「面白いことを言うね。ハズレだけど、着眼点はイイよ。実は、ニコラ夫人がご主人の遺志を継いでシャンパーニュを作った頃、ラベルの色は白に近かったらしい。黄色が大好きだったニコラ夫人は、白ラベルが地味で好きにはなれなかったそうだ」

 

「あぁ~。それで黄色なんですね」

 

「いや、実はある日の朝食で、食卓に目玉焼きが出たんだ。当時の鶏は、トウモロコシを食べて放し飼いで逞しく育っていたんで、卵黄の色が今のヨウド卵みたいな濃厚な黄色だったらしい」

 

「もしかして......」

 

「そう。目玉焼きを見たニコル夫人は、『白身の色みたいな今のラベルをやめて、卵黄のような黄色にしよう』と決断したんだ。

 

「えーーーっ!」

 

「今じゃ、この『クリコ・オレンジ』の黄色は『137C』として商標登録してあって、他のメゾンはこの色は使えないんだ。ランスにあるヴーヴ・クリコの本社に行くと、広いショップがあって、クリコ・オレンジのクッションや傘だけじゃなくて、椅子や自転車まで売ってるぞ。僕は椅子を買ってきたよ(自慢げに胸を張って、グラスのヴーヴ・クリコを飲み干した)」

 

「卵の黄身の色だったんすか、これ......。ハロウィンのオレンジ色にも見えますね。」

 

「いいところに気がついたね。ハロウィンは10月31日なんだけど、10月の最終週にヴーヴ・クリコをフィーチャーするパーティーやレストランが多いよ。そんなレストランにお相手を誘って、『ヴーヴ・クリコは、頑張っている女性の元祖で、キミみたいだね』と言ってあげるといいかもね。

 

マ「ふむふむ(いよいよメモを取り始めた)」

 

「プレゼントするなら、ヴーヴ・クリコ社の最高級版、『ラ・グランダム』で決まりだろう。正確には、『ラ・グランド・ダム』だけど、日本じゃ、『グランダム』って呼んでるね。『偉大な女性』って意味だから、その『弘美ちゃん』へのプレゼントにイイかもね」

 

マナブ「じゃあ、それにします。グランダムを飲んだことがないんですけど、どんな味なんすか?」

 

「ヴーヴ・クリコは、女性が頑張っているシャンパーニュ・メゾンなので、エレガントと思うだろうけど、その反対だ。このメゾンは、黒葡萄のピノ・ノワールが得意で、ドッシリした男っぽいシャンパーニュを造るね。」

 

「そうなんすね。弘美ちゃんも、ちょっとボーイッシュで、シャキッとしてて、そこにキュンキュンくるんですよね」

 

「(マナブを無視して、続ける)ニコラ夫人は、ワンマンだったのか強い信念があってね、『シャンパーニュは、黒葡萄と白葡萄をバランスよく混ぜて作るべき』と言ったんだよ。これが家訓になってね、他の有名なメゾンなら、白葡萄だけの『ブラン・ド・ブラン』や、黒葡萄だけの『ブラン・ド・ノワール』を作って、付加価値をつけて高額で販売するんだけれど、ヴーヴ・クリコは、220年前のニコラ夫人の言葉を守って、必ず、白黒葡萄を混ぜてるんだよ。その意味では、古風で律義な武士みたいな雰囲気があるよね」

 

「そう言えば、弘美ちゃんのお店って、昔からバターは必ずエシレ産でしたよ。これも、ご先祖からの遺言なんすかねぇ」

 

「ずっとエシレのバターか。古風だね。結構、こだわってるんだなぁ......」

 

二人はヴーヴ・クリコをお代わりして力強く乾杯。

神宮球場での試合が終ってヤクルト・スワローズが快勝したのか、青山通りにはユニフォーム姿のグループが、何組も通り過ぎた。これから、シャンパーニュで祝杯をあげるに違いない。青山一丁目の夜がふけ、ますます賑やかになった。

シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など

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