雄大で緑豊かな北海道十勝地方は、大手の乳製品メーカーから家族経営の小規模なチーズ工房まで、数多く存在する酪農王国です。特に近年は、十勝に移り住み、世界を見据えて十勝という素晴らしい土地を反映した、新しいチーズ造りに挑戦している造り手達が増えています。
そこで今回は、十勝の緑の大地に根付いた、日本のクラフトチーズを代表する2つの生産者を訪ね、お話をうかがいました。
半田ファーム
十勝南部の大樹町にあるファーム。1994年からチーズ造りを始めた、農家製チーズのパイオニア的存在で、当主の半田さんの影響を受けたチーズ生産者は数多くいます。
※飼育するホルスタイン約120頭は、つなぎ飼いではなく、牛舎と牧草地を自由に行き来できるフリーストールバーン方式を採用。
「最初はチーズ造りの知識がなかったから、与えられた環境で独学でチーズを造った」と半田さん。試行錯誤の上に出来上がった手づくりの滋味深いチーズはいずれも、オチャード、チモシー、ルーサン、という牧草の名前がつけられています。牛が食べる草が乳になり、やがてチーズになる。北海道の大地に育つ草が全ての元になるという考えによるものです。
※程よく熟成した、食べ頃のチモシーを手に話す半田司さん。
※切り立てのチモシーは、もちもちとした食感で、ミルクのほのかな甘味とコクがあります。
現在チーズの製造は、フランスでチーズ造りを学んだ次男の康朗さんが担当しています。
特別にチーズ工房を見学させていただきました。湿度が高めの工房内はとても清潔で、器材もピカピカに磨かれていました。そして、地下の熟成庫では大切にチーズが保管されていました。
※チーズ造りにかかせない酵母や乳酸菌、牛が食べる草がチーズに与える風味の違いまで、詳しく説明して下さる半田康朗さん。
「おいしいチーズを日常的に食べて欲しい。だから、高価なチーズにはしない」と、康朗さんは言います。
確かに、半田ファームのチーズは手づくりで本格的なナチュラルチーズにもかかわらず、手頃な価格でファームのショップでは欲しい分だけ切り分けて販売もしてくれます。
大切に育てられている牛やチーズ、そして私達消費者にも優しい半田さんファミリー。気軽に半田ファームにチーズを買いに行くことのできる地元の人達を羨ましく思いながらファームを後にしました。
半田ファーム
住所:〒089-2106 北海道広尾郡大樹町下大樹198番地
TEL:01558-6-3182
FAX:01558-6-3181
MAIL:handafar@cocoa.ocn.ne.jp
営業時間:11:00~18:00(水曜日~日曜日)
ランラン・ファーム」
雄大な十勝平野と日高山脈を臨む緑豊かな清水町。そこにランラン・ファームの運営する「十勝千年の森」はあります。森を守り、人と自然が触れ合える場所として美しく整えられたその敷地内のゴートファームでは、日本でまだめずらしいヤギ乳チーズが造られています。
※広い草原で自由に草を食む子ヤギ達。
ヤギは冬の終わりから春にかけて出産する季節繁殖動物なので、「ヤギにストレスを与えないよう、冬の間はヤギの搾乳を休み、チーズの製造も休止します」とヤギ飼育・チーズ製造担当の斉藤さん。
※斉藤さんが呼ぶとどこからともなくヤギ達が集まってくる
実は斉藤さんは元々ヤギの飼育が専門で、たまたまチーズを造ることになったとのこと。ヤギ乳のチーズも苦手だったことから、自分が食べて美味しいチーズを造ろうと研究を重ねたそうです。そして完成したチーズは、国内外で高く評価され話題となりました。
ヤギ乳はクセがあるというイメージが強く、日本人にはまだまだ馴染みのないヤギ乳チーズですが、斉藤さんは「ヤギのミルクは非常にデリケートで、臭いや外気の影響を受けやすいので、畜舎の環境を整え、チーズ造りは搾乳段階から細心の注意を払って手作りしています。」と語っていました。そんな斉藤さんの並々ならぬ努力の賜物「十勝シェーブル・炭」は、実際に食べてみるとヤギ乳独特の臭いもなく、さっぱりとした、それでいて濃厚な旨味のあるチーズでした。
※表面に食用の木炭粉をまぶした「十勝シェーブル・炭」
ランラン・ファーム(十勝千年の森)
〒089-0356 北海道清水町羽帯南10線
※無料駐車場完備(200台)
TEL:0156-63-3000
FAX:0156-63-3031
まとめ
皆さんも十勝地方を旅行するなら是非、ファームを訪れてみてはいかがでしょうか?ファームでいただくミルクや乳製品の美味しさは格別です。そして、機会があれば酪農家やチーズ生産者のお話を直接うかがってみると良いでしょう。造り手の高い志と情熱のもとに生まれる、十勝の大地を反映したチーズのファンになること間違いありません。
ファームの見学を希望する場合は、ホームページ等で事前に見学を受け入れているか否か確認の上、必ず予約をしてから訪問するようにしましょう。