点数や星の数はもう古い!? ワインの新しい評価の仕方とは?

ワイン・アドヴォケイト、ル・クラスマン、ガンベロ・ロッソ…。

ちょっと聞き慣れないかもしれませんが、これらは全て有名なワイン評価本の名前です。フランスやアメリカ等の主要ワイン生産国や、ワインを大量に輸入してきた長い歴史を持つイギリスには、著名なワインジャーナリストが手がけるワインの評価本や専門誌がいつくかあり、それらがワイン界に及ぼす影響力は非常に大きいと言われています。

ところで、ワインの評価といえば長年、テイスティングコメントとともに点数(ポイント)や☆(星)の数などで表す方法が採用されてきました。しかし最近では、新しい方法でワインを評価するガイド本が注目されています。一体どんな方法でワインを評価しているのでしょうか?今回はワインの新しい評価の仕方と内容を紹介したいと思います。

スローフード協会のワインガイド「slow wine」

イタリア北部のピエモンテ州にある小さな町ブラで、今から約30年前にスローフードという国際的な運動が始まりました。この運動はファストフードに対して唱えられた考え方で、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動、または、その食品自体を指します。今では世界中にスローフードの考え方が広まり、日本にも「日本スローフード協会」があります。

現在もブラに本拠地を置くスローフード協会が、2011年度から発行しているのが「スローワイン」というイタリアワインのガイドブックで、今たいへん注目されています。

このガイドブックには、各ワインの香り、味の評価のみならず、ワインやワイナリーの歴史、ブドウの栽培方法や醸造方法、生産者の個性までもが記されていますが、点数は付けられていません。

その土地の伝統的な食文化を大切にするという考え方から選ばれるワインの大半は、イタリアの土着品種のブドウを使ったものが多く、除草剤等の農薬を使用して栽培されたブドウを原料としたワインは選出されていません。

評価基準とガイドブック内の表示は以下の通りとなっています。

ワイナリー表彰

カタツムリマーク:スローフード協会が考える価値(ワインの香りや味、地域性、環境、個性)があり、コストパフォーマンスに優れたワインを生産するワイナリーに贈られるシンボルマーク

ボトルマーク:テイスティングで、平均して優れた品質を示したワインを生産するワイナリーに贈られるシンボルマーク

コインマーク:コストパフォーマンスに優れた手頃な価格のワインを生産するワイナリーに贈られるシンボルマーク

ワイン表彰

Slow Wine:知覚的品質において傑出したワイン、グラスの中に歴史やアイデンティティを濃縮している。同時にコストパフィーマンスにも優れている。

Great Wine:知覚的観点において最上級のワイン。

Everyday Wine:コストパフォーマンスに非常に優れ、小売価格10ユーロ以下で取引されているワイン。

ワインに点数を付けるのはもう古い?

では、なぜ今「slow wine」のような、ワインに点数を付けないガイドブックが注目されているのでしょうか?

理由はいくつか考えられますが、まずはSNSの浸透です。ワインの詳細を知りたい時、多くの人はSNSでつながっている身近な仲間の感想や、ネットショップの商品説明、あるいは生産者のホームページを参考にしているのではないでしょうか。

ワインの味わいから価格まで瞬時にわかるようになった今、専門家の難解なコメントや得点より、彼らにとってはむしろSNSのリアルな情報の方が信憑性は高く、わかりやすいのでしょう。

また、ワインを100点満点で評価する画期的な方法で一躍有名になったアメリカ人のワインジャーナリスト、ロバート・パーカーの影響力の衰退も理由の一つです。

その類希なるテイスティング能力で「ワインの帝王」という異名まで持ち、長年活躍してきた彼も今年70歳になり、業界内では引退が近いのではとささやかれています。

いわゆる「パーカーポイント」と呼ばれた得点は、一昔前までは、ワインをよく知らない人にとって非常にわかりやすいワイン選択ツールでした。しかし、ワイン後進国であった日本も今や一定レベルのワインの知識を持つ人が増え、独自の判断でワインを選べるようになったこと、高得点のワインを飲むステイタスに飽きたことも理由として考えられます。

さらに、近年の「食」への関心の高まりです。ワインは嗜好品ですが農産物でもあるため、個々のワインが生まれた背景に興味を持つ人が多く、背景に共鳴した人がそのワインのファンになることが往々にしてあります。

ワインに限らず他の農産物も同じですが、生産方法、具体的には農薬や添加物を使用せずに造られたかどうかということに人々の関心が高まっている昨今の風潮を鑑みれば、「slow wine」のようなガイドブックが生まれたのも必然だったと言えるでしょう。

Slow Food Intl
Slow Wine Guide 2017: A Year in the Life of Italy’s Vineyards and Wines
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まとめ

とは言え、ワインを点数化して客観的に評価することに意味はあるという意見もまだまだ根強くあります。長い経験を積んだ専門家が、産地を何度も訪れて情報を収集した上でテイスティングし、評価した得点に説得力があるのもまた事実です。ですが、得点はあくまで評価の一つであって絶対的な価値ではありません。

専門家の客観的評価も参考にしつつ、あくまで主観的にワインの価値を判断することこそワインの楽しみではないでしょうか。その判断基準として、ワインの味わいや香りの他に、生産地や造り手の個性、生産方法をも加味することは、もはや当たり前の時代になったのです。

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ワインコーディネーター/ワインライター。
フランス留学後、ワイン専門店勤務を経て、ワインコーディネーターに。
飲み頃や旬を大切にワインとチーズの魅力を伝えるサロン「Wine Salon d’Ourse」主宰。飲食店や食のイベントプロデュースの他、ライターとしてワインやチーズに関する情報も発信している。
J.S.A.ソムリエ / C.P.A.チーズプロフェッショナル

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