日本でも2018年10月から厳格なワイン法が施行され、消費者が「日本で造られたブドウを原料にしたワイン」や「ラベルに表示された地名で造られたワイン」など、原産地がしっかりと把握できるワインを手にしやすくなります。
日本のワインを向上させるために必要不可欠なワイン法ですが、実は遡ること5年、2013年に日本唯一のワイン銘醸地である山梨県では国税庁が認めた『地理的表示「山梨」』が誕生していたことをご存知ですか?
今回は、ワイン法に先駆けたこの「GI Yamanashi」について、どういうものなのかご紹介したいと思います。
もくじ
日本ワインとは?
これまで日本で販売されるワインには、任意組織である「ワイナリー協会」が定める「国産ワインに関する自主基準」に則った表示がなされてきました。この基準によると「国産ワイン」について「日本国内で製造販売しているワイン」であれば、原料のブドウが日本産でも海外産でも問題ないとしており、消費者の混乱を招いていました。
一方で日本のワインは近年、品質が向上し、世界的なワインの賞が授与されるなど公的に認められるようになってきています。そういった背景もあり、日本の個性豊かなワインが消費者の舌に覚えてもらいづらい状況を打破する意味合いもあり、ワイン法が2015年に制定されました。
そして、2018年の施行により、これまで「国産ワイン」と表示されてきたものは「国内製造ワイン」となり、原料ブドウが100%国内のものを使用したワインを「日本ワイン」とすることになりました。
この日本ワインですが、原料ブドウを100%国産のものにする他に、産地である地域名を表示する場合は、その地で収穫されたブドウを85%以上使用しなければならないという規定があります。
また、品種名についても85%以上の使用、収穫年もその年に収穫されたブドウが85%以上使用されている必要があります。
これはヨーロッパの基準に倣ったもので、よりレベルの高いワイン生産国を目指すために、他にもラベルの義務表示や任意表示について厳しい基準が設けられました。
地理的表示とは?
ワイン法は主に原料の産地やワインの醸造地を明確にして、さらにそのワインが何者であるのか、ということを消費者に対して正確に伝えるためのものです。
これに関連して、ある特定の産地の特徴的な原料や製法によって造られたものだけが、その産地名を独占的に名乗ることができるという制度が「地理的表示」になります。これは確かな品質を国内だけでなく、国外にもアピールするためのものです。
日本では国税庁長官が「酒類の地理的表示に関する表示基準」により指定しており、その地理的表示の保護を目的としています。
指定された商品には、容器か包装の一箇所以上(ワインの場合はメインラベル)に「地理的表示」、「Geographical Indication」、「GI」のいずれかと地名との組み合わせが表示されています。
『地理的表示「山梨」』について
日本ワインの向上を目指しているワイン業界ですが、特にワイン生産量もワイナリー数も日本でトップの山梨では、2013年に『地理的表示「山梨」』が誕生し、法制度下で認められる産地となりました。メインラベルへの表示は、現在「GI Yamanashi」に統一されています。
表示可能な生産基準は非常に厳しく、原料は山梨産ブドウ100%であること、指定品種のみ使用していること、山梨県内で醸造・容器詰めしていること、補糖、補酸、除酸には一定の制限があり、アルコール添加の禁止などの規定に加え、分析値などの審査と官能検査(※)にクリアしなければ表示が認められていません。
世界的に見ると「地理的表示」は文字通り地理の表示を保証する場合が多く、品質にまで言及する場合はそれよりも上のレベルである「原産地呼称」の制度が適用されます。少なくとも『地理的表示「山梨」』については、世界基準では「原産地呼称」と同等もしくは、それに近い制度だと言えるでしょう。
※官能検査(官能試験)とは、人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて、製品の品質を判定する検査のことです。
『地理的表示「山梨」』による影響
基準の厳しい『地理的表示「山梨」』は国際的に通用するものです。この制度により、地理的表示を認められていないワインが「山梨」の名前を使うのはもちろんのこと、「山梨風」という曖昧な表現も使うことが世界的に禁止されました。
県内のワインであっても、先に書いた一定の要件を満たし官能検査にクリアしていないものは「山梨」の表示が使用できません。
厳格なこの制度によって、今までは輸出された場合、それがどれだけ質の高いものであっても「テーブルワイン」と認識されていた日本のワインが、原産地の保証された“山梨のブランドワイン”として認識されるようになり、質の高さが世界的に認められるようになりつつあります。
「GI Yamanashi」表示のワインがあるワイナリー
原産地だけでなく、官能検査で品質が良しとされたワインには安心感がありますよね。もちろん、ただ安全なだけではなく風味や味わいもレベルが高いものである“印”が「GI Yamanashi」になります。
例えば、日本ワインとして初めて地理的表示が認められたワインを販売している中央葡萄酒(グレイスワイン)では、多くのワインに地理的表示が認められています。
その中でもお手頃の価格で人気の高い「グレイス グリド甲州」は、甲州のほのかな苦味を癖になる味わいに変え、調和した旨味とコクを生み出した見事な白ワインです。
他にも多くの素晴らしいワインがリリースされているので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
「GI Yamanashi」の魅力を堪能できるイベント
「GI Yamanashi」について、もっと知識を掘り下げたいと思った人も少なくないのではないでしょうか?
そんな山梨ワインについて、もっと知りたいと思った人にオススメのイベント「地理的表示「山梨」ワインシンポジウム GI Yamanashiを聴いて唎く集い」が、3月24日(土)に東京・渋谷にて行われます。
プログラムの前半では講師による講演と「GI Yamanashi」の魅力を語るパネルディスカッションが行われ、後半では実際にワインの造り手の思いを直接聞きながら、「GI Yamanashi」が表示されたワインをテイスティングすることができます。
参加費は無料。参加される場合は、下記サイトにて申込が必要となっています(応募締め切り3月10日)。
【イベント概要】
「地理的表示「山梨」ワインシンポジウム GI Yamanashiを聴いて唎く集い」
開催日:2018年3月24日(土)
会場:ベルサール渋谷ファースト 東京都渋谷区東1-2-20
※「ベルサール渋谷ガーデン」と間違えないよう注意。
アクセス:渋谷駅東口より徒歩8分 表参道駅B1出口より徒歩10分
時間:13:30~16:30(13:00開場)
定員:300名(抽選)
参加費:無料
参加ワイナリー | 公式サイト |
あさや葡萄酒 | http://www.asaya-winery.jp/ |
アルプスワイン | http://www.alpswine.com/ |
勝沼醸造 | http://www.katsunuma-winery.com/ |
くらむぼんワイン | http://www.kurambon.com/ |
グランポレール勝沼ワイナリー | http://www.sapporobeer.jp/brewery/katsunuma/index.html |
グレイスワイン | http://www.grace-wine.com/ |
サドヤ | http://www.sadoya.co.jp/ |
サン.フーズ 韮崎工場 | https://www.sanfoodskumano.jp/ |
サントリー登美の丘ワイナリー | https://www.suntory.co.jp/factory/tominooka/ |
シャトー勝沼 | http://www.chateauk.co.jp/ |
シャトー酒折ワイナリー | http://www.sakaoriwine.com/ |
シャトー・メルシャン | http://www.chateaumercian.com/ |
白百合醸造 | http://www.shirayuriwine.com/ |
蒼龍葡萄酒 | http://www.wine.or.jp/soryu/ |
フジッコワイナリー | http://www.fujiclairwine.jp/ |
まるき葡萄酒 | http://www.marukiwine.co.jp/ |
マルス山梨ワイナリー | https://www.hombo.co.jp/marswine/ |
丸藤葡萄酒工業 | http://www.rubaiyat.jp/ |
マンズワイン | https://www.kikkoman.co.jp/manns/ |
盛田甲州ワイナリー | http://www.chanmoris.co.jp/ |
大和葡萄酒 | http://www.yamatowine.com/ |
ルミエール | http://www.lumiere.jp/ |
まとめ
これからワインを楽しんで行こうと思っている方には少し気難しい話題だったかもしれません。
要は、日本ワインが世界的に認められつつあり、中でも「GI Yamanashi」が表示されたワインについては、国際的に通用する品質である、ということです。
ワインは難しく考えてしまうと、つまらなくなってしまうこともあります。しかし、星の数ほどあるワインの中から、美味しいものを選び取るのは簡単ではありません。
そういうときは、このようなちょっとした情報を元にワインを探してみてはいかがでしょうか?