ワイン歴20年、いわゆるアラフォー世代の私だが、ワインに関しては人並み以上に飲んできた。日本のワインエキスパートの資格を持っているのは当然のこと、趣味の延長でワインバーを経営した過去もある。
さて今回、たまたま私の知人が当サイト家ワイン運営に関わっていたことから「ワイン初心者でも楽しみながらワインの基礎知識が学べるコラム」の執筆依頼があり、私如きで恐縮ではあるが、新たな女性ファン開拓のために仕事を引き受けた次第だ。
わかりやすく、かつワイン業界の常識を恐れぬワイン愛好家ならではの大胆な語り口でワインの魅力と知識を伝えていけたらいいと思っている。最初に断わっておくが、普段から態度が大きいことで知られる私なので、文章もそのスタイルを貫き通したいと思うのでご容赦願いたい。と、意外と小心者なので批判メールは控え目にしてほしい。
さて、第一回目のコラムは、ワインを家で買って飲む時に問題になる「飲み残したワインの保存方法」。未だに1日1本ワインを飲んでいる私レベルの大酒飲みワイン通になれば、ワインの保存方法で悩むこと自体がない(逆に2本目を開けるかどうか悩むことはあるが、、、)。しかし健全な量でワインをたしなんでいる方であれば、家で開けたワインをその日のうちに飲み切ってしまうことの方が珍しいだろう。
そこで問題になるのが、飲み残したワインの保存方法だ。
「ワインは一度栓を開けたら、その日のうちに飲んでしまわなければならない」 そんな言葉をワイン通が語ることを耳にした人もいるだろうし、ワインの専門書にも基本同じようなことが書いてある。しかしそれは本当だろうか? 数千円するワインを買って、仮に1日で飲み切れず1杯分余ってしまえば飲めないワインとしてシンクに流さなければいけないのだろうか?一人暮らしのアラサーアラフォー世代には家でワインを飲むな!と宣告されているに等しい話である。
3000円のワインにしても1杯分余れば量的に500円分はあり、素直に納得できる話ではない。セレブトークのはずが、いきなり貧乏くさい話をしてしまったが、セラーに眠るワイン1000本、全部足すとマンションが買える程のワインを購入してきた私でも、いやだからこそ、ワイン愛好家として1杯、イヤ1滴のワインさえ無駄にすることは許せないのである。
今回の記事では、1日約1本過去10年で3000本以上のワイン、年代物のロマネ・コンティからコンビニの1000円ワインまで飲み尽くしてきた私が、素人のワイン飲みだからこそ語れるワインの保存方法について考えてみたい。
もくじ
何はともあれ、蓋をして冷蔵庫
細かい話をすればきりがないのだが、結論からいうと、普通にフタをして冷蔵庫に入れて保管するだけで、大抵のワインがその後何日間かは楽しむことができる。
20年以上熟成させて微妙な香りや味わいを楽しむ高級ワインならともかく、普通に売っている数千円クラスのワインであれば、ワインによって多少の味の変化はあるものの、数日冷蔵庫に入れておくことは全く問題ないと断言できる。中には開けた時より美味しくなるものもあったりするのがワインの面白さでもある。
毎日一杯ずつ飲んで味わいの変化を楽しむのも良いだろう。ワインによって差はあるが数日~1週間は十分楽しめるはずだ。「最初程、美味しくない。そろそろ限界。」と感じたら、その日のうちに飲み切るか、量が少なければ料理に使えば良い。余り深く考えず、もっと気軽にワインライフを楽しもう。
何故、冷蔵庫と思う人がいるかもしれないが、食品を冷やして保管するのは、なにもワインに限った話ではない。ドレッシングからマヨネーズまで、一度栓をあけて空気に触れた食品は、暖かいところに置いておくと傷みやすいのは自然の摂理だ。
ちなみに平温でワインを保管しておくと、劣化が圧倒的に早い。冬ならともかく、日本の夏にワインを一度開けたワインを平温で保管すると次の日でも飲めないことがままあるので注意したい。
一度開けたワインの味が変わる理由
これで終わると流石に取り留めがない気もするので、もう少し真面目な人のために掘り下げたことも説明しておく。まず、ワインは栓を開けた瞬間、つまり空気に触れた瞬間からワインの酸化が始まり、それに伴い、少しずつ味が変わっていく。逆にいえば、一度開けたワインを長持ちさせるには、ワインを空気(酸素)とできるだけ触れ合わせないようにして、酸化を遅らせることが大事になる。
開けてから最初の数十分~数時間、ワインによっては1日程度の酸化は、ワインの固さが取れ、開けた直後に比べて飲みやすくより美味しくなることもある。しかし酸化が進むにつれて、ワインからは果実味が失われ、平板で酸化という名前の通り、酸味ばかりが目立つバランスの悪い味わいになっていく。これが「ワインはその日のうちに飲んでしまった方が良い」といわれる大きな要因だ。
開けたワインを長持ちさせる方法
酸化を防ぐための具体的な方法は、実は色々ある。冒頭に書いた栓をして冷蔵庫に入れておくことが基本だが、この方法は瓶の中で一定の酸素が残り、ワインの酸化が進んでしまうことも事実。ワインをもっと持たせたい人には以下3つの方法を合わせて行うと格段にワインを長持ちさせることができる。
1.真空容器に移し替える
残ったワインの酸化を防ぐには、空気に触れずに保存ができる真空容器に入れることをオススメする。
真空ハジーボトルは数日に分けて少量ずつ飲んでも、そのまま保管しても酸化を防いでくれる優れもの。真空なので振動によるワインの劣化も心配もなく、横にしても液だれしないところが有難い。
真空容器は湿度管理や乾燥の心配もないので、移し替えて冷蔵庫に保管しておけば、場所をとらないワインセラーに早変わりする。
2.小瓶に移し替える
残ったワインの酸化を防ぐには、ワインの表面を空気に触れないようにすること。手軽にできる方法が、ワインのハーフボトル(375ml)や、栄養ドリンクなどが入っていた瓶(180~250ml)に余ったワインを入れて保存する方法だ。通常のワインボトル(750ml)に比べ、瓶内の空気量が少なく、酸化を遅らせることができる。
「今日はたくさん飲めそうもない」とあらかじめ分かっている場合は、ワインの栓を開けたらすぐに、用意しておいた小瓶にワインを移し替えて保存しておけばいい。この時、気をつけることは小瓶の注ぎ口のギリギリまでワインを注ぎワインをできるだけ空気に触れさせないことだ。
移し換えの際に多少酸素には触れるが、そのまま栓をしてしまえば、ワインは酸化から免れてかなり長持ちする。もちろん入れ替え容器は事前によく洗っておいてほしい。栄養ドリンクの味がするワインは酸化以上に飲むに堪えない。
3.真空ポンプ器具を使う
小瓶を用意していくのは面倒、という方に薦めたいのがこの方法だ(実は私も普段はこれ)。真空ポンプ器具、というと大げさに聞こえるが、ワインショップならどこでも売っている。
有名なのは「バキュバン」というオランダのブランドだが、種類は幾つかあり、どれも2,000~3,000円で売っている。仕組み的には同じなのでデザインが気に入ったものを買えば良い。
ゴムとプラスチックの特殊栓と小型の手動ポンプがセットになっており、ポンプを使って瓶内の空気を外に吸い出し、瓶内の空隙を真空にすることによって、酸化を防ぐ仕組みだ。ワイン愛好家の間ではメジャーな存在で、一度買っておけば何度も使えるので1セット常備しておくと便利なことこの上ない。
手軽な器具だけに、完璧に真空になるわけではないが、ワインに栓をするだけの手法よりはるかに酸化が遅れる。確実に1日以上の差はあるだろう。私は家でワインを飲む時、1本飲んでいる途中で、他のワインが飲みたくなった時は、これでワインに封をし、2本目を開けてしまうこともままある。大酒のみには危険な道具でもある。
4.窒素ガスのボンベを使う
それでも物足りない人、より完璧を求める人には「窒素ガスボンベ」を使う方法もある。なにやら物騒な単語が飛び出してきたと思われる方もいるだろうが、ワインショップで普通に売っている。
小型のボンブから瓶内の空隙に窒素を注入し、ワインの酸化を防ぐ仕組みだ。手動の真空ポンプより瓶内の酸素を排除しやすい。1500円~数千円前後と意外と安く、一回数十円程度で済むので少し高級ワインを長持ちさせたいという時には向いているだろう。
最も、私自身も以前は使っていたが、ガスがなくなって取り替えるのが面倒なので今は真空ポンプ1本だが(そもそも、飲み残すことが少ないが)。
ただこの記事を書く過程で久しぶりに窒素ガスボンベ(オーストラリアのWinesave)を買ってみたが値段が少し高めだが(50回分で3500円程度)、かなり高性能な印象を受けた。今後はワインによっては使ってみたいと思う。
飲み残したワインの保存期間
以上、ワインの保存方法について説明してきたが、「保存方法はわかったけど、実際どれ位、保存できるの?」と思っている人もいることだろう。過去10年で3000本以上のワインを飲みほしてきた私だが、残念ながら、どのワインだからどれくらいもつということははっきり言えない。
多くの女性と付き合うと、恋愛論も一概にステレオタイプ化して語れなくなるわけだが、ワインも千差万別、それと同じ理論だ。
ただし経験上、白ワインより赤ワインのほうが長く元来の風味を楽しむことができるとはいえる。平均すると普通に冷蔵庫に蓋をして入れただけでも赤ワインは3~4日間、白ワインは2~3日間は美味しく飲めるだろう。とはいえワインが少しずつ酸化していく経過も「味わいのうち」と考えれば、もっと長いスパンで楽しんでいい。
実際、1週間冷蔵庫に入れておいたワインでも普通に飲めることも多い。先日は冷蔵庫の片隅に1カ月忘れたままワイン(バキュバン使用)を飲んだが、意外と美味しく飲めて驚いたりもした。多少ワインが酸化しても、体に悪いわけではない。
「飲み残すと勿体ないからワインは買わない」という人もいるようだが、私にはワインの楽しみを自ら奪っているとしか思えない。「ワインはその日のうちに飲まないとダメ」などというワイン通の神話に惑わされず、あなた自身の味覚を信じて、もっと自由にワインを楽しんでほしい。