はじめに
ブドウ品種に別名を持つものがあるというのはご存知でしょうか。一つのブドウ品種が国や地域が変われば呼び方が変わるものがあるのです。今回は土地が変われば呼び方が変わる、そんなブドウ品種のお話しをしたいと思います。
なぜ別名があるのか
これにはいくつかの説があります。一つ目には、ブドウ品種が伝播する途中で読み方やつづりが現地の言葉に置き換えられたということが挙げられます。
二つ目には、その土地で昔から生えていたブドウに地元の人々が名前をつけたということが挙げられます。今でこそイタリアはイタリア、フランスはフランスといったように一つの国として認識されていますが、昔は国境は現在とは異なるものであり、それぞれの時代と土地でワインを作るためにブドウが育てられ、名付けられ今に至っているのではないかと考えられます。
どんなブドウ品種と別名があるのか
では代表的にどんなブドウ品種と呼び方があるか見ていきましょう。これを知っているとちょっとワイン通っぽくなれますよ。
白ブドウ
ミュスカデ(フランス各地)=ムロン・ド・ブルゴーニュ(フランス・ロワール地方)
直訳すると「ブルゴーニュのメロン」という意味になります。もともとはブルゴーニュが原産のブドウでしたがロワールに移植され、葉っぱがメロンに似ている、香りがメロンに似ているなど諸説ありますがこのような名前がつきました。
ピノ・グリ(世界各地)=トカイ・ダルザス(フランス・アルザス地方)=ピノ・グリージョ(イタリア)=ルーレンダー(ドイツ)=グラウブルグンダー(ドイツ)
世界中で栽培されているピノ・グリですが、実に様々な名前を持っています。呼び名を持っている地域を見るだけでフランスとイタリア、ドイツを巡る歴史が浮かんできますね。
ソーヴィニヨン・ブラン(世界各地)=ブラン・フュメ(フランス・ロワール地方)=フュメ・ブラン(アメリカ)
フュメとは「煙」という意味を持ち、ソーヴィニヨン・ブランが持つ火打石のような香りからきています。
黒ブドウ
ピノ・ノワール(フランスなど世界中)=シュペート・ブルグンダー(ドイツ)
ブドウ品種の別名コンビとして一番良く知られているものではないでしょうか。ドイツワインでは両方の名前が記載されたラベルを見かけることがよくあります。
ジンファンデル(アメリカ)=プリミティーボ(イタリア)
長年このふたつは同じブドウ品種か議論されていましたが、DNA分析の発達により同じブドウ品種であることが証明されました。
テンプラニーリョ(スペイン・リオハ地区、ナバーラ地区、世界各地)
これは実にたくさんあります。スペイン国内だけで以下の通りです。同じ国の中なのにすごい数ですね。
センシベル(ラ・マンチャ地区)
ティント・フィノ、ティント・デル・パイス(リベラ・デル・ドゥエロ地区)
ウル・デ・リェブレ、オホ・デ・リェブレ(カタルーニャ地区)
ティンタ・デ・トロ(トロ地区)
ティンタ・デ・マドリッド(マドリッド地区)
最後に
同じ品種なのに世界のどこかで違う名前を持つブドウたち。 その名前一つを取り上げても、その土地土地で愛されて名付けられたり、世界中に伝わりワインの原料となったりした過程を想像し、その歴史に思いを馳せるのもまたワインの楽しみ方の一つですね。