はじめに
ワインを醸造する過程で、ブランデーや度数の高いアルコールを添加して作られるのが酒精強化ワイン(fortified wine)。前回のコラムでは、代表的な酒精強化ワインであるポートワインやシェリーをご紹介しました。
今回は、ちょっと聞き慣れないかもしれませんが、フランスにも美味しい酒精強化ワインがあるのでご紹介したいと思います。
フランスの酒精強化ワイン
フランスでは特に南部のラングドック・ルーション地方や、コニャックやアルマニャックの産地でもある南西部で多く造られています。原料となるぶどう品種も、添加されるアルコールも様々ですが、アルコールを添加するタイミングで大きく二つに分けられます。
ヴァン・ドゥー・ナチュレル(Vins Doux Naturels)
Doux はフランス語で「甘い」という意味なので、直訳すると「天然甘口ワイン」。
ぶどう果汁の発酵中にアルコールを添加し、発酵を停止させるため、天然の糖分がワインの中に残ることによって甘口になります。 日本では、南フランス・ルーション地方産の「バニュルス」が最も有名で、手に入れやすいのではないでしょうか。赤、白ともに造られていますが、特に赤はまろやかな甘みとタンニンのバランスが良く、チョコレートとの相性は抜群です。
日本では、数年前にバニュルスを輸入していた会社が、バレンタインのシーズンにチョコレートとのマリアージュをプロモーションしたことがきっかけで一気に知名度が上がりました。
ヴァン・ド・リキュール(Vins de Liqueur)
未発酵のぶどう果汁にアルコールを添加して発酵を停止した状態で、樽に入れ熟成させます。 ぶどう果汁にコニャックを添加して造られる「ピノー・デ・シャラント」、アルマニャックを添加して造られる「フロック・ド・ガスコーニュ」が有名です。
また、スイス、イタリアの国境近くのワイン産地、ジュラ地方でもマールやオー・ド・ヴィー(ブランデー)を添加して「マックヴァン・ド・ジュラ」というヴァン・ド・リキュールが造られています。
いずれもトロリとした質感で、貴腐ワインのような甘美な味わいです。ワイン専門店でもなかなか見かけないので、レストランのワインリストで見かけたら、是非、食後酒に飲んでみてはいかがでしょうか?
まとめ
甘いものは苦手、という方でも、ワインが好きならこれらの酒精強化ワインを一度は飲んでみることをおすすめいたします。甘口でも酸がしっかりとあるので、後味は意外とすっきりしています。
そのため、食後酒として飲むと、口の中はさっぱりと洗われ、さらに、高めのアルコールが満腹の胃を心地よく刺激し消化を助けてくれる、とも言われています。そして何より、食後を優雅で至福のひとときにしてくれるに違いないでしょう。