はじめに
世界の二大銘醸地のひとつとして知られるボルドー。このボルドーは、赤ワイン、白ワインともに、さまざまな味わいのワインを産み出していますが、ボルドーと聞くと、タンニンをしっかり感じる重厚な赤ワインのイメージを持つ方も多いと思います。
では、みなさんは、ボルドーの赤ワインが「右岸」と「左岸」というふたつのエリアによって、個性の違いがあるのをご存知ですか? 今回は、この「右岸」「左岸」についてお話ししていきます。
ボルドーの3つの川
ボルドー地方はフランス南西部大西洋に面した北緯44~46度に位置しています。ちなみに、日本にあてはめると北海道の宗谷岬と同じくらいなのですが、比較的温暖な地域です。
では、このボルドーの地図をよく見てみましょう。ここには3つの川が流れていることがわ かりますね。
少し覚えにくいのですが・・・東の中央山脈から流れるドルドーニュ川、ピレネー山脈から流れるガロンヌ川、そのふたつが合流し大西洋に流れていく大きなジロンド川という3つの川です。
普通、川の流れる方向を向いて右側を「右岸」左側を「左岸」と言います。ボルドーには3つの川がありますので、ドルドーニュ川からジロンド川にかけての右側が「右岸」、ガロンヌ川からジロンド川にかけての左側が「左岸」となります。
右岸の特徴
右岸の土壌は粘土質が優勢な場所です。これは、ドルドーニュ川が上流から粘土質の土を運び堆積しているためです。
このような土壌を好む品種がメルローです。水もちがよく保温性の高い粘土質の土壌がメルローの生育に合っており、必然的にメルローが多く植樹されますので、右岸の赤ワインはメルロー主体のものが多くなります。メルローは、タンニンは控えめ、ふくよかで柔らかく、豊かな果実味が特徴ですので、右岸の赤ワインはメルローらしい豊満なワインとなります。
ちなみに右岸といえば、サンテミリオン地区、ポムローム地区が有名です。「世界で一番美しい!」「世界最高のメルロー!」と評されているシャトー・ペトリュスは、この右岸ポムロームにあります。
左岸の特徴
左岸の土壌は、砂利が基本です。これは、ガロンヌ川が上流の山脈から岩のかけらを運び、それが流れていくうちに砂利となったためです。
この砂利質の土壌は水はけが非常によく、カベルネ・ソーヴィニヨンが好む土壌ですので、左岸の赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン主体のものが多くなります。カベルネ・ソーヴィニヨンといえば、タンニンが非常に強く、パワーのあるワインを造りだしますので、左岸のワインは、骨格のはっきりした強健なワインが多いのです。
いわゆる5大シャトー(*)など超有名ワインは左岸に集中してあります。
*5大シャトー
シャトー・ラフィット・ロートシルト
シャトー・ムートン・ロートシルト
シャトー・マルゴー
シャトー・ラ・トゥール
シャトー・オー・ブリオン
おわりに
いかがでしたか?
ボルドーを流れる川が土壌形成に影響を与えたことで、右岸左岸の個性がつくられたことになりますね。この個性を上手に生かしたワイン造りを行ったことで、ボルドーが銘醸地と発展したのでしょう。
また、川・港という水運に恵まれていたことから、早くからワイン貿易が盛んになったことも、ボルドーが世界に開かれていった一因のようです。