はじめに
ワインが大好きという方々であれば、馴染みのワインショップや高級レストラン、ビストロのひとつやふたつあるはずです。そんなお気に入りの場所にて、熱心なワイン愛好家の方々はワイン関連の新情報をさまざま仕入れていることでしょう。
今回はワインが好きな方々のために、ワインに関するちょっとしたニュースなどを豆知識風にまとめました。ワイン好きの集まりなどの時の、ちょっとしたネタとしてお使いください。
ボルドー、1855年の格付けのユネスコ世界遺産申請中止?
ワインの聖地、フランス・ボルドー。ワイン好きであれば、1855年のメドックとソーテルヌ&バルサックの格付けを知らない方はいないでしょう。
その数、メドック60シャトー、ペサックレオニャン1シャトー、ソーテルヌ&バルサック27シャトーの計88。1855年の制定以来、メドックのシャトー・ムートン・ロスチャイルドの一級格上げを例外に、160年を超えても不動の格付けを守り続けています。
フランスのボルドーといえば、「月の港」が2007年にユネスコの世界文化遺産に登録されたことで知られていますが、ワイン文化も遺産レベル。この1855年の格付けも登録しようではないか!という動きがあっても、何ら不思議ではありません。
しかし、残念ながら申請の段階でシャトーの足並みが揃わず、結果中止となってしまったというのです。理由はさまざまではありますが、要するに世界遺産になってしまうと、本当に地位が「不変」になってしまうということです。
3級が2級より優れていても格付けは3級、1級があまりにもみっとも無いワインを作ったとしても、5級のシャトーの数倍の価格で取引されるなどバリバリの階級制度文化が特徴のボルドー。
世界遺産になってしまえば、今後何かの天変地異が起こった時に格付け総入れ換えという、格上げを狙うシャトーの夢が難しくなってしまうのです。
個人商店の集合体という特徴のあるボルドーのワイン産業だけに、足並みを揃えるのは相当難しいようです。ちょっと残念ですが、各シャトーの気持ちも分からなくも無い、非常に複雑な話です。
AOCの条件の細かい話
フランスワインといえば、AOC。「原産地統制呼称」などと呼ばれていますが、生産地やアルコール度数、ぶどう品種など厳しい規定を守ったことで名乗ることができる、一種のブランドです。
「このワインは、AOCが定める厳しい基準を通過した…」と、ざっくりといつも説明されますが、実際にはどんな基準なのかハッキリと分かる方は少ないと思います。ここでは、あのロマネコンティを例に挙げて、AOCと名乗る条件項目を紹介しましょう。
まず赤ワインであること、生産地域がロマネコンティの畑であること、ぶどう品種がピノノワールであること。そして、植樹密度と植樹の間隔ですが、9,000本/ha以上で畝間間隔は1.25メートルまでで、樹間は0.5メートルの間隔までも条件です。
さらに剪定方法、1ヘクタールに8000キロの果実をならせること。灌漑は禁止、収穫するぶどうは果汁1ℓあたり糖分は189グラム以上の熟度、天然アルコール度が11.5%が最低アルコール度とされています。
何となく眠気が襲い出してきましたが、まだまだありますよ。 次にぶどうの収量。ヘクタールあたり35ヘクトリットルという、メートル法の容積の単位であるヘクトリットルで表されます。もちろん、まだ細かい規定があるわけですから、AOCを名乗るのが非常に厳しいというか、辛いわけです。
ちなみに、トスカーナ地方にはワイン法に縛られず、DOCなどの規定に無い品種や製造法で作られる美味しいワイン「スーパータスカン」なるものがあります。国によってワイン法は違いますが、原産地統制呼称制度の条件はどこも厳しいものであり、スーパータスカンを造り上げたイタリア人の気持ちも、何となく分かるところではないでしょうか。
おまけ
今回も長々となってしまったので、最後にライトなものをひとつ。スペインが誇るスパークリングワイン、CAVAのお話です。1872年に製造がスタートしたCAVAですが、シャンパーニュ製法をお手本としているため瓶内二次発酵で造られています。
高品質の割にとてもカジュアルな価格なので、日本でも大人気です。 そんなCAVAなのですが、読み方は「カヴァ」ではなく「カバ」だそうです。スペイン語のVAの読みは、河馬の「バ」になるそうで、カヴァではなく「カバ」が正式な呼称だそうです。スペイン大使館経済商務部もそうして欲しいと訴えているとかいないとか…。
また、近年ではピノ・ノワールの使用も白とロゼに認められおり、ピノノワール100%だとブラン・ド・ノワールとなります。シャンパーニュと一緒になっては個性が無くなると反対意見もあるようですが、何だかんだで、これからもカヴァ…カバは進化から目が離せませんね!