【連載】シャンパーニュは、心遣いの出来る「優等生」のオネエサン

オトナワイン - お家ワインを目指すための特訓講座第

【 登場人物 】
葉山さん:ワインの世界を新しい切り口で教えてくれる、人気ワインライター

マナブ:社会人3年目、ワイン初心者で彼女募集中のイマドキ風な若者


マナブ君を相手に、「初デートでオーダーするのはシャンパーニュ」の話が続く。

「ビールが好きな人って、どんな料理でもビールを飲むよね。フレンチでも鮨屋でもタイ料理でも中華でも。泡があると、大抵の食べ物に合うんだ。『泡は食べ物の間口を広くする』って言葉があるほどだから。でも、ビールだと、意外性とオシャレ感がないのがツラいよね。で、登場するのが『貴族のビール』、シャンパーニュって訳さ」


「シャンパーニュが大抵の食事に合うのは泡のせいなんすね。飲んでたんすが、気が付きませんでした。泡って、甘くなくて口の中がスッキリするし、食欲も湧くんで、僕も泡の出るお酒って大好きっすよ。モエ・エ・シャンドンなんか、何度か飲みましたよ」


「食事とワインの相性のことを『マリアージュ』と言って、フランス語で結婚のことだけど、マリアージュがワイン通の薀蓄の見せどころなんだ。例えば、『ブルゴーニュのシャンボール・ミュジニー村の赤ワインと桃がいい相性』みたいな超マニアックなのもあるけど、この『無限に広がる底なし沼』を避ける上でも、万能選手のシャンパーニュはいい選択だよ」


シャンパーニュは、気遣いができて、誰とでも仲良くやっていける優等生的な女性って感じっすね。来週、会う彼女みたい」


「そうだ。ワイン・リストを彼女と見ながら、ワインを選ぶ時、『ワインのことはよく知らないけど、シャンパーニュが大好き』って言えば、ワインを知らないことが、逆に、カッコよさになるんだ。例えば、同期入社の女性が、『自動車のこと、全然知らなくて、お母さんのを借りてきたの』って言いながらベンツSL350に乗ってくるとビックリするのと同じかな」


彼女、ちょっと金持ちっぽいんで、お母さん、本当にベンツかも知れませんよ(軽くガッツポーズ)。僕はプリウスでも十分っすけど...来週のデートが楽しみっす」


「ここで、一つ注意だけど、ひょっとして、泡の出るワインならなんでもシャンパーニュって思ってないかい?」


「そんなこと、オレでも知ってますよ。泡が出るワインは、カリフォルニア、スペイン、イタリアとかでたくさん作ってますけど、これは全部スパークリングワインっすよね。その中で、シャンパーニュ地方でできたのがシャンパン、いや、シャンパーニュ。この前、旅行でシンガポールへ行った時、ワイン・リストに、『シャンパーニュ(カリフォルニア)』って書いてあって、ビックリしました」


「シャンパーニュとスパークリングワインのこと、意外によく勉強してるね。酢飯に魚を乗せたのが『鮨』で、東京の鮨を『江戸前』って言うのに似てるかな。『鮨』がスパークリングワインで、『江戸前』がシャンパーニュだね」


「なるほど!」


「大阪の鮨を江戸前と言わないように、カリフォルニアの泡をシャンパーニュとは言えないね。実際に、『シャンパーニュ』ってラベルに書いたカリフォルニアの泡もあるけど、イエローカードだな。シャンパーニュは真似をされるくらい、スパークリングワインの圧倒的な最高峰なんだ」(妙に力が入っている)


「カリフォルニア産の泡、結構、美味かったすけどね。本物のシャンパーニュか、それ以外のスパークリングワインか、見分けられるとカッコイイっすよね。味や銘柄以外で、見分けられるんすか?」


「見分けるのは超簡単さ。シャンパーニュは、ラベルに必ず、Champagneと書かなきゃいけないって法律で決まっているんだ。ワイン・リストにも、Champagneって書いてるはずだし、5,000円以下じゃ載ってないしね」


「えっ、5,000円っておかしくないっすか?」


「心配しなくていいよ。逆に、世界のどんな高級高価なレストランへ行っても、低価格帯のシャンパーニュは1本$100以下、100€以下、1万円以下で飲めるのがエラい。『お家ワイン』だと、小売価格で飲めるんで、この半額以下だ。その意味でも、『お家ワイン』、最強だろ? 泡の出ないフツーのワインだと、ワイン・リストを見て、『これを飲みたい』って思うのは1万円から始まる感じだからね」(と言いながら、遠くを見る)


(つられて、同じ方向を見る)


「低価格帯のシャンパーニュといっても高級感がタップリだし、食事にピッタリ合うんで、ワイン通は大好きだよ」(急にテンションが上がって、演説状態……)


「はい。じゃあ、ビストロへ行って、ワイン・リストを渡されたら、高そうな赤白のワインをチェックするふりをして、最後に『シャンパーニュをお願いします』って言えばいいんすね」


「これまで、シャンパーニュのいいところを言ったけど、選択肢が少ないことも嬉しいよね」


「えっ、種類が少ないんですか?なんですかそれ。それじゃあ、食事に合わせる時の選択肢が少ないってことっすか?」


「シャンパーニュの生産者をメゾンって言って、メゾンの数は日本酒の酒蔵の3倍ぐらいで5000ほどあるんだけど、ワインリストに載るのは大手の常連で、5、6メゾンぐらいかな」


「へぇ~」


「各メゾンで、いろんなシャンパーニュを作ってるんで、マリアージュのことは心配しなくて大丈夫。このメゾンの名前を正しく読んでオーダーできれば、第2関門通過で1塁へ行けるよ。


「ふむふむ」


「そして、泡の出ないワイン...これをスティルワインって呼ぶんだけれど、これだと、世界の500の生産者の20年分の情報が必要なんで、『にわかワイン通』を装うにはハードルが高いかな?ちなみに、ボルドーの生産者を『シャトー』、ブルゴーニュは『ドメーヌ』と呼んで、スペインの生産者は『ボデガ』、アメリカは『ワイナリー』かな」(アドレナリンが全開状態……)


……(一度にたくさん言われたが、「メゾン」だけを覚えておけばイイと涼しい顔)


「で、ワインリストに載っている可能性が高くて、読み方を覚えておくと威張れる有名メゾンは、『異端児が褒める萌えママ久里子は暴飲じゃ』の半ダースかな?」



Taittinger(テタンジェ)
略称:テタンジェ(語呂合わせ:異端児)

Pommery(ポメリー)
略称:ポメリー(語呂合わせ:褒める)

Moet et Chandon(モエ・エ・シャンドン)
略称:モエ(語呂合わせ:萌え~)

G.H.Mumm(ジェ・アッシュ・マム)
略称:マム(語呂合わせ:ママ)

Veuve Cliqcuot(ヴーヴ・クリコ)
略称:クリコ(語呂合わせ:久里子)

Bollinger(ボランジェ)
略称:ボランジェ(語呂合わせ:暴飲じゃ)


「大雑把に言って、上のメゾンほど、エレガントで女性的な作りで、下ほどドッシリと男性的になるかな? モエは飲んだことがあるって言ってたよね? それぞれのメゾンの特徴を一言で表現するとね……」


と言いながら、今回も絶好調の葉山さん...次回へ続く

シャンパーニュとブルゴーニュを愛するワイン・ライター。ワイン専門誌「ヴィノテーク」、「神の雫(モーニング)」等にコラムを執筆。2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。主な著書は「クイズでワイン通」「今夜使えるワインの小ネタ(以上講談社)」、「30分で一生使えるワイン術(ポプラ社)」など

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