私達が日々飲むことができるワインは、ブドウを育て・ワインを造り・それを買い求め消費する人々がいて、初めて全てが廻ります。
強い陽射しの下に広がる一画の畑に集ったのは、生産者・醸造家・消費者。皆でブドウ畑を前に、同じワインを口にした時、ワインに引き寄せられた繋がりを、より感じることができました。
今回は一般非公開の塩尻ワイナリーを訪問し、ブドウ生産者から直接お話を伺い、日本のワイン産地を肌で感じてきました。
2017年9月5日ニューリリースの塩尻ワイナリーシリーズ
東京から電車で約2時間30分、緑溢れる景色の中で降り立った塩尻の駅前に、1936年に設立された塩尻ワイナリーがあります。標高が高いため、暑さの中にもカラリとした空気と心地良い風が頬を撫でます。
今年サントリーからニューリリースされるのは、ブドウの収穫地とワインの醸造所が同じである「塩尻」を大きくワインラベルに書いた“塩尻ワイナリーシリーズ”です。塩尻の持つ風土の特徴を活かし、日本ワインの品質をさらに高めるワインと期待されています。
一般非公開の塩尻ワイナリー
歴史あるセラー内は、周りを盛土で固め半地下の造りをしています。奥に進むと寒いほどの涼しさと、しっとりとした雰囲気。フランス産の樽とサントリーならではのウイスキー ミズナラの樽の中で、赤ワインが静かにその時を今か今かと待っています。
サントリーは契約農家の方々との繋がりを重視し、赤玉ポートワイン用のブドウのために赤玉出荷組合を設立しています。契約農家との関係性を大切にすることは、土地に根付いたワイン造りとブドウの品質を守るためでもあります。
岩垂原メルロは、サントリー日本ワインシリーズの中でも上質で高評価なワインで、Gの会合ランチワインとして提供されたほどの、素晴らしい実績を誇っています。その赤ワイン用のブドウを造っている、契約農家の山本氏の畑を案内していただきました。
サントリー岩垂原メルロ畑の見学
塩尻は生育期の降水量が少ないこと、日照量が多いこと、寒暖差が大きいことで、上質なブドウが出来上がると言われます。中でも山本氏の畑は気流の変化の激しい場所にあり、常に空気が動いている土地のようです。
こちらの畑で、メルロとマスカット・ベーリーAの7月現在の様子を拝見します。可愛らしい粒が小さく連なり、日を遮ることのない葉の重なり様は見事です。
(左:メルロ/右:マスカット・ベーリーA)
ブドウを植える前には、同じ畑にリンゴや桑を栽培した経験もあるようですが、なかなか上手く実らず、最後にブドウを植えたところ、実が生ったと言います。自然環境に選ばれたブドウは、その後サントリー岩垂原メルロとなり、数々の賞を受賞する高評価なワインへと生まれ変わってゆくのです。
山本氏は「私は農家だからワインの細かいことは分からないが、植えて10年くらい経った時かな。なんだか良いものができるかもしれないな、と少しずつ感じました。1本1本、葉も枝も見て回るので、時間と手間はかかりますけどね。自分が育てたブドウでワインが造られて、それが褒めてもらえるなんて嬉しいです。」と、謙遜しながらもお話が上手で、とてもチャーミングな山本氏です。ブドウにも山本氏の誠実な人柄がでているようです。
岩垂原の畑で味わうメルロ
ブドウ畑を目の前にし、生産者・醸造家・私達消費者が一緒になって、ワインで乾杯しました。こんなに素晴らしいワインの飲み方は他にありません。暑さの中で喉を潤してくれるのは、香ばしくスパイシーな香りと、バランスの取れた滑らかな味わい。どんな想いでブドウを育てたのか、どんな想いでワインを造ったのか。私達消費者側には伝わりづらい想いの部分を今回は肌で感じ、ワイン1杯に対する概念が変わる感覚でした。
日本ワインというカテゴリーは、他社も一緒になって盛り上げる必要があると言います。それは、嗜好品の「酒」という大きなカテゴリーではなく、「日本のブドウから土地に根付いたワインを造り、産地ごとに深めていく。」という”日本のワインを造る”という想いが同じだからなのでしょう。9月発売となる、サントリー塩尻ワイナリーシリーズ。今から発売が楽しみです!