はじめに
前回は海バスクを紹介したので、今回はフランス南西部ピレネー山脈麓に広がる山バスクについてのご紹介します。
まずはバスク地方を一望できる聖なる山、ラ・リュヌへ。1924年の開通当初から変わらぬ姿で走る優雅でかわいらしい登山列車に乗って標高905M・全長4.2キロの道のりを時速8キロで約30分の列車の旅へ出発です。
車窓からは途中に野生の馬や羊たちが悠々と歩く姿を目にする事ができます。
山頂はフランスとスペインの国境に位置し、ピレネー山脈とバスク湾が見渡せる圧巻の風景が広がります。この山中には独自の伝統や文化、山の幸など、バスクの宝が詰まっています。
山バスクの幸
まず山も幸としてご紹介したいのがバスク山中にある、ピエール・オテイザ。かつて絶滅の危機にあったバスク豚を保護し、復活させた第一人者のお店で純血種『バスク豚』のシャルキュトリーを取り扱うお店です。
シャルキュトリーとは、ソーセージやハム、テリーヌにリエットなど、その土地の恵みを生かし伝統的な手法で作られるお肉の加工食品です。
バスク豚はバスク野山を駆け回り森の中で栗やドングリ、フルーツなどを食糧にして育ち、バスクの恵みが詰まった風味豊かな絶品のシャルキュトリーです。
シャルキュトリーとバケットにワインを合わせればスペシャルな御馳走の出来上がりです。ホームパーテーの手みやげに、バーベキューの一品にと様々な楽しみ方が出来ます。
お店の外壁には唐辛子が沢山かけられていましたが、バスクでは街のいたるところで唐辛子が吊るしてあるのをよく見かけます。
バスク地方には赤い唐辛子のピマン・デ・スプレットというAOCを持つものがあります。収穫した唐辛子を陽に当て乾燥させ砕いて粒状にしたもので、フレンチバスクの郷土料理には欠かせません。
ピレネー山脈の羊乳のチーズ
また山バスクでは、羊が盛んに放牧されています。この地方では羊乳性のチーズも有名でオッソーイラティというちょっと変わったネーミングのチーズがあります。
オッソーとは谷、イラティは森を意味し産地の名前からきていて、外皮は淡いオレンジ色でクセも少なくまろやかな味わいのチーズです。特産のブラックチェリーのジャムを添えたり、バイヨンヌの生ハムと食べたりします。 こちらはビアリッツのマルシェで見つけたカイエ・ド・ブルビ。カイエとはミルクに乳酸菌や凝乳酵素を添加してできたプリン状の生地、ブルビとは羊のことで、カードをすくっただけの羊乳フレッシュチーズです。
喉越しも味わいも杏仁豆腐の様で甘くて柔らかく、ジャムや蜂蜜を添えてデザート感覚でもいただけます。素焼きの小さなポットに入って売られていて、このフレッシュが頂けるのもこの地ならでは!
おわりに
バスク地方は古くからスペイン、サンテイアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼街道として栄え、白い壁に深紅にドアがついた木組み家々が連なる美しい村があります。赤と白のコントラストが鮮やかでバスク独特な風景に包まれます。
オッソーイラティは、濃厚でこってりとしていながらもクセも少なく、マイルドな味わいの羊乳チーズでピレネー地区のワインとも相性が良いです。 ワインとシャルキュトリー、チーズで山バスクを楽しんではいかがでしょうか?